中国史とつなげて学ぶと日本史の常識が覆る理由

「アジア史の視点」から日本史を捉えなおす意義

寒冷が緩んで移動交通が活性化、各地の生産も回復し、それに応じて在地勢力が伸張する。こうした現象が世界的な潮流でして、列島内部の動きもおそらく同じ現象の一環のように思われます。そしてコピー法制の律令ではいよいよ対応しきれなくなって、政治も文化も土俗化していきました。鎌倉時代の到来はそのピークをなしています。

ユーラシア大陸は13世紀にモンゴル帝国の建設を経て、大統合に向かいました。そこで日本へも直接の圧力がきます。いわゆる「蒙古襲来」ですが、このモンゴルの動きこそ、それまでの温暖化の総決算ともいえるでしょう。

といいますのも、9世紀ごろから本格化した温暖化は、草原の植生を回復させ、遊牧民の活動をうながし、遊牧国家の強大化をもたしました。東アジアではウイグル・契丹・女真を経てモンゴルにいきつく動きです。また農耕世界の中国では、環境の好転・競争の激化・資源の開発にともない、唐宋変革という技術革新・経済成長・文藝復興がおこりました。そうした政治軍事・経済文化の飛躍的伸張が結集したのが、モンゴル帝国の大統合だったわけです。

14世紀の危機から大航海時代へ

日本は「蒙古襲来」を撃退して、その大統合に加わりませんでした。このあたりも日本と大陸の隔たりをあらわしています。温暖化という気候変動を共有し、類似の社会経済現象を経験しながら、しかも異なる道をたどったところに、日本史の特性をみることができます。

世界史ではこのモンゴル帝国、日本史では「蒙古襲来」は、1つの分水嶺をなしています。といいますのも、それからまもない14世紀に、気候が寒冷化に転じたからです。ヨーロッパのペスト蔓延が典型的ですが、世界全体が疫病と不況で暗転しました。

以後の世界史はその「危機」から脱却すべく、新たな営為をはじめることになります。日本列島でも、鎌倉幕府の崩壊とそれ以降の騒乱が生じました。そこでも中国との関係が、たえず問題になっていたことは見のがせません。

「危機」からおよそ200年。そのブレイクスルーが大航海時代にはじまる環大西洋革命・産業革命・世界経済、つまり西洋近代の形成になります。その動きはもちろん世界中に波及しまして、日本におよんだ影響は、戦国乱世・南蛮渡来・天下統一という16世紀以降の近世へ至る歴史にあらわれています。それが明清交代という大陸の動乱とパラレルなことも注目すべき現象です。

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