ダスキン営業車暴走騒動に見たロゴを背負う重み 資本関係ない加盟店従業員にも自覚促す必要がある

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こうして、

「わたしはこの会社の仕事をしています」

ということが周囲にわかるようにすることで自覚を促すというのが伝統的な考え方だったのですが、ここ10年で急速に進んだスマホやドライブレコーダーによる「IT監視社会化」の動きの中で、この考えを見直したほうがいいのかどうかというのが、今回の問題提起です。

もしも、

「こういった事件によって会社の評判が落ちるのはマイナスだから、もう会社の営業車にロゴをつけるのはやめよう」

と考える会社が出てきたらどうなるのかを考えてみます。

私の予測では、そのようなことをした場合、間違いなく重大な事故が起きるリスクが今よりも高まるでしょう。

資本関係のないグループ企業が多い業態では特に重要

これは特に、人数が多く、従業員の出入りも多く、かつフランチャイズや代理店のように資本関係がないグループ企業が多い業態においては間違いなく重要なことです。懲罰含めて直接の指導ができないからです。

たとえそれが勤務1日目のパート従業員だったとしても、会社の看板を背負って責任感をもって働いてもらう必要がある。だから車にも、場合によっては服装にも、自分の所属がどこの組織なのかがはっきりわかる印がついているのです。

そこにIT監視社会の時代がやってきたということは、本社の広報や社長室のスタッフにとっては頭の痛い時代かもしれません。バイトテロと同じで、日本のどこかの町で、組織に入って間もない誰かが何かをしでかすところまで、すべてをコントロールするのは無理な話です。

この事態を冷静に捉えると「確率的にどの会社も、世間に頭を下げなければならないうえにブランドの評判を下げるリスクを抱えた時代がやってきた」ということです。しかしそれを少しでも抑えるためには「やはり会社のロゴをはっきりと営業車に描く」ことが最良の従業員の意識のコントロール方法です。

そしてこれからもSNS上では今回のような有名企業やその看板を背負った会社の従業員による不適切行為を糾弾する動画が拡散されるでしょう。そのような場合でも「当事者を憎んで企業を憎まず」と言ったら言いすぎでしょうか。

内情を知っているだけに、企業はそういった従業員の行動を撲滅するために日夜頑張っているのだということもお伝えしたいと思うのです。もし周囲でロゴを描くのをやめる会社が出てきたら、その会社のほうを「ブラック経営なのではないか?」と考えるべきなのです。

鈴木 貴博 経済評論家、百年コンサルティング代表

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すずき たかひろ / Takahiro Suzuki

東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)を経て2003年に独立。人材企業やIT企業の戦略コンサルティングの傍ら、経済評論家として活躍。人工知能が経済に与える影響についての論客としても知られる。著書に日本経済予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』(PHP)、『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』(講談社)、『戦略思考トレーニングシリーズ』(日経文庫)などがある。BS朝日『モノシリスト』準レギュラーなどテレビ出演も多い。オスカープロモーション所属。

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