すかいらーくがコメダに実は翻弄されている理由 「100店閉鎖」に至らしめたインフレ以外の要因
また、食べ盛りの子どもに対応する食事メニューが豊富にあることも指摘できる。2019年に発表され、その肉の量で話題となった「コメ牛」(牛カルビ肉のハンバーガー)はSNSでも話題となり、2020年にも再発売されたほどで、食事をガッツリ食べたい子どもにとっても満足できるメニューが揃っている。さらに、名物の「シロノワール」は、SNS上でその大きさが度々話題になるメニューで、これは先に中井氏が指摘した「ファミレスの普遍的なメニュー」とは対照的な存在といっていい。
コメダといえば従来、トーストとゆで卵が無料で付いてくるモーニングサービスや、昼間でも長居できることから、シニア層に好評を博してきたが、最近ではさまざまな工夫の結果、ファミリー層からの支持を得てきているのだ。
「鉄道資本主義」から「シン・街道資本主義」へ
ここまでは、ロードサイド店舗が苦境に立たされており、その中でもコメダが健闘をしていると語ってきたが、そもそも都市論の分野では、ロードサイド店にとってポジティブな指摘も存在する。人々の消費生活が変化した結果、都市型店舗よりも、ロードサイドにある郊外型店舗のほうが、人々の需要が高まってきている……という指摘だ。コメダはそうした需要に乗った可能性も高い。
東京工業大学教授の柳瀬博一氏は、「住む場所の変化が『シン・街道資本主義』を生む訳」のなかで、2000年前後に進行し、コロナ禍でさらに進んだ消費生活の変化を「鉄道資本主義」から「シン・街道資本主義」への変化であるとまとめている。
かつては渋沢栄一や五島慶太などの実業家によって、私鉄が主体となって沿線開発を行い駅前に商業施設を作ることで都市の形が形成されていた。そこでの商業活動は「鉄道」によって支えられており、消費の中心地も駅前の百貨店のようなものに支えられていた。しかし、自動車が普及するにつれて鉄道への依存度は弱まっていき、自動車を中心とする消費生活の体制が整っていった……という主張である。
柳瀬氏はこの変化に際して、興味深いデータを上げている。1人当たりの自動車保有台数が1台を超えたのは、実はバブルが崩壊して以後、1990年代半ばからのことであり、その後も自動車保有台数は一度も減っていないというのである。
さらに、通勤・通学手段を見ると、鉄道が過半数を大きく上回るのは首都圏1都3県以外には、京都・大阪・兵庫・滋賀、そして名古屋が位置する愛知県、福岡県のみで、日本の大半は、普段の通勤も自動車がメインだという。そうなれば、もちろん消費活動も自動車で行うのがベースになっているはずだ(柳瀬氏は久保哲朗氏が発表している「都道府県別の鉄道通勤・通学率」を参考にしている)。
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