すかいらーくがコメダに実は翻弄されている理由 「100店閉鎖」に至らしめたインフレ以外の要因

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車を運転したことがある人ならば、一度は縦列駐車に悩まされたことがあるだろう。そのような自動車ユーザーの目線に立った店舗設計は、「シン・街道資本主義」の時代において重要な要素になるのである。

先ほども述べたように日本の消費者の多くは自動車ユーザーである。そのユーザーを適度に取り込み、コロナ禍においても、いや、コロナ禍だからこそ業績を拡大しているのがコメダ珈琲店なのである。

ファミレスだけでなく、カフェも競合だ

こうした事情を察するに、ガストがロードサイド店舗で利益を上げられなくなったのは、コメダなどに比べて、時代の需要を的確に反映出来なくなってきたことが挙げられるだろう。そしてその結果、他店舗との熾烈な郊外型店舗の出店競争に敗れた、という見方もできる。

この記事ではコメダを例に挙げたが、郊外型珈琲チェーンはその数を増やしているし、コーヒーチェーンだけでなく、ファミレスやファストフードなど、さまざまな店舗が郊外型出店を行い、その戦いは熾烈になっている。そしてその背後には、当然「シン・街道資本主義」の流れがある。

2021年に入って増加傾向にある、すかいらーくグループの「むさしの森珈琲」。高原リゾートを思わせる、木々に囲まれた癒やしの空間が特徴だ(撮影:風間仁一郎)

 

これらは、すかいらーくの経営陣も十二分に感じていることだろう。2015年に1号店がオープンした郊外型ファミリー向けコーヒー店の「むさしの森珈琲」は、今年6月時点で65店にまで店舗数を増やしている。

しかし、現状では残念ながら、コメダほどのインパクトを消費者に与えられていないのも事実だ。ガストやステーキガストからむさしの森珈琲に置き換わる店舗も増えている印象だが、勝ちに繋がるかは、もっと本質的な部分が問われるだろう。

ガストの前身である「すかいらーく」は日本のモータリゼーションの黎明期であった1970年代に、郊外家族向けの業態を開発したことで、日本のロードサイド型飲食店の先駆けとなった存在だ。日本ではじめてのセントラルキッチン方式を採用し、外食業界に大きな影響を与えた存在でもある。郊外型店舗設計のノウハウは日本の中でも随一だといっていい。

逆にいえば、本腰を入れて郊外型店舗の設計を行い、「街道資本主義」の時代に適合する施策を行うことで、コメダやその他の群雄割拠の時代において存在感を増すことができるのではないだろうか。そして、その時に必要になるのは郊外型向けの施策に本腰を入れる「覚悟」なのではないだろうか。

谷頭 和希 チェーンストア研究家・ライター

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

チェーンストア研究家・ライター。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

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