東洋経済オンラインとは
ライフ #近代日本を創造したリアリスト 大久保利通の正体

苦境から粘りが凄い「大久保利通」外交手腕の神髄 100%理想を追わず、ベストに近い選択を繰り返す

9分で読める
  • 真山 知幸 伝記作家、偉人研究家、芸術修士(MFA)
2/4 PAGES
3/4 PAGES

大久保は内心、焦ったに違いない。なにしろ、財政上、戦争は困難だということ以前に、台湾にいる日本兵が危機に陥っていた。マラリアの蔓延でバタバタと死亡していたのである。このまま帰国すれば、台湾出兵を非難されて、国内がバラバラのなかで、清を迎え撃つことになる。

大久保は完全に追い詰められるかたちになったが、「交渉をとにかく続ける」ことに力を注ぐ。3回目の会談のあとでは、質問状を渡している。4回目の会談を開かざるをえなくするためだ。そうして時間を稼ぎながら、大久保は突破口がないかを必死に考えた。

どんな苦境に陥っても、ひっくり返すための方法が、必ず何かあるはず。それは、貧しい下流武士に生まれた大久保がはい上がり、幕府や朝廷と対峙するなかで得た実感でもあった。

大胆な行動から打開策が見つかる

4日目の会談で、大久保が動く。らちがあかないために会談の終盤で「帰国する」と言い切ったのだ。さらに、随行員の1人である井上毅に、最後通牒に近い文章をしたためさせている。

賭けではあるが、大久保は密かに1つの疑念を持っていた。それは清も実は戦争をする気はそこまでないのではないか、ということだ。三条実美にこんな手紙を送っている。

「現地の様子をよく観察すると、あちらから急に兵を起こしてくることはありえない」

それでも3回目までは、交渉を決裂させないように注意していたが、いっそのこと、こちらも戦争をやる気であるという姿勢を見せて、様子を見てみようと考えたのだ。

すると、意外なところから反応が起こる。それはイギリスだ。アヘン戦争で勝利したイギリスは、清を監督する立場にあった。

もし、ここで日本と清が戦えば、清も少なからず損害をこうむってしまうのではないか。イギリス公使のウェードはそんなふうに考えて、なんとか両国の間を取り持とうとした。大久保はここが突破口になると考えた。

次ページが続きます:
【その後も粘り強く交渉】

4/4 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象