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「高額紙幣の廃止」で犯罪撲滅を図った国の末路 インドと北朝鮮がやらかした壮大な経済失策

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たしかに、高額紙幣を見直そうとしている政府もある。しかし、現金──ないしあらゆる類の決済──を廃止することは、口で言うほど簡単なことではない。感情は昂り、愛着は強く、慣習はびくともしないように見える。そしてロジスティクスも容易ではない。

カナダは2000年に千カナダ・ドル札の発行を、シンガポールは2014年に一万シンガポール・ドル札の発行を終了したが、ユーロ圏ではそう簡単に物事は進まなかった。

紙幣に対する信頼が揺らぐ

同年、ユーロ圏の19の中央銀行のうち17行が悪名高き五百ユーロ札の印刷を終了した。現金の利用が盛んなドイツとオーストリアも、抗議がなかったわけではないが、2019年にこれに続いた。

当時、ドイツ連邦銀行総裁のイェンス・ヴァイトマンは、この紙幣を段階的に廃止することは「犯罪対策にはほとんどならず、ユーロに対する信用を傷つけるだけだ」として異議を唱えた。五百ユーロ札はもはやほかのユーロ圏の国々(およびイギリス)では通用せず、交換もできないものの、ドイツとオーストリアではいまだ法定通貨となっており、商業銀行での交換や再流通が可能である。この2つのドイツ語圏の中央銀行が新しい五百ユーロ札の発行を停止したため、理論的には五百ユーロ札はやがて姿を消すことになる。

このような妥協によって問題が一挙に解決されることはないかもしれないが、もっとひどい結果──現金に対する信頼を損なうこと──を回避することはできる。これがヴァイトマンの主張の要であった。

すなわち、五百ユーロ札を受理しなくなることで、ほかの紙幣にも同様の措置が適用されるのではないかと人々を不安にさせる可能性がある、ということだ。その不安から、人々は二百ユーロ札、ひいては百ユーロ札さえも使うのを拒否するようになるかもしれない。

何より、これはとくにドイツ語圏の国々において、現金に対する絶対的な信頼を維持することが中央銀行にとって重要であることを示している。

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【国内の大混乱を引き起こしたインド】

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