お金の出入り口を狙った「決済詐欺」攻防の歴史 カード偽造からフィッシング、CEO詐欺まで

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 5
拡大
縮小
金融犯罪
アナログ決済もデジタル決済も、盗難や詐欺のリスクをはらんでいる(写真:CORA/PIXTA)
銀行強盗や振り込み詐欺など、昔から犯罪者達は大金を求めて、お金の出入り口である「決済」の現場に目を光らせている。もちろん、守る側もただ黙って指をくわえているわけではなく、そこには激しい攻防を繰り広げてきた歴史がある。決済オタクであり、S W I F T(国際銀行間通信協会)の元C E Oでもあるゴットフリート・レイブラントの新刊『教養としての決済』(ナターシャ・デ・テランとの共著、大久保彩訳)から、カード業界を例に、詐欺師と業界との攻防の歴史を解説する。

ドラマ『ペーパー・ハウス』は時代錯誤

ネットフリックスの人気ドラマシリーズ『ペーパー・ハウス』では、「プロフェッサー」と よばれる首謀者が遠隔で指揮をとりながら、さまざまな分野に強みをもつ泥棒の集団が、スペインの王立造幣局──通称「カサ・デ・パペル」(「紙の家」という意味で、スペイン語版の原題にもなっている)──に侵入する。

『教養としての決済』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

泥棒たちは、警察が予想したようにたんに戦利品をつかんで逃げるのではなく、人質たちとともに立てこもり、印刷機(そしてこのドラマシリーズ)を動かし続ける。11日間そこにとどまり、追跡不可能な紙幣を24億ユーロ印刷することがかれらの目的なのだ。

この筋書きは独創的でドラマチックかもしれない。しかしその巧妙さとは裏腹に、この強盗は実にアナログなものだ。デジタル社会の現代において、「プロフェッサー」ほど創意にあふれる人物の手口とは思えない。決済の分野では、サイバー犯罪との戦いが以前から大きな課題となっているのだ。

画面上であれ実生活においてであれ、アナログ決済もデジタル決済も、盗難や詐欺のリスクをはらんでいる。なぜなら決済はお金の出入り口だからだ。

次ページカード決済詐欺の歴史
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT