お金の出入り口を狙った「決済詐欺」攻防の歴史 カード偽造からフィッシング、CEO詐欺まで

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金融犯罪
アナログ決済もデジタル決済も、盗難や詐欺のリスクをはらんでいる(写真:CORA/PIXTA)
銀行強盗や振り込み詐欺など、昔から犯罪者達は大金を求めて、お金の出入り口である「決済」の現場に目を光らせている。もちろん、守る側もただ黙って指をくわえているわけではなく、そこには激しい攻防を繰り広げてきた歴史がある。決済オタクであり、S W I F T(国際銀行間通信協会)の元C E Oでもあるゴットフリート・レイブラントの新刊『教養としての決済』(ナターシャ・デ・テランとの共著、大久保彩訳)から、カード業界を例に、詐欺師と業界との攻防の歴史を解説する。

ドラマ『ペーパー・ハウス』は時代錯誤

ネットフリックスの人気ドラマシリーズ『ペーパー・ハウス』では、「プロフェッサー」と よばれる首謀者が遠隔で指揮をとりながら、さまざまな分野に強みをもつ泥棒の集団が、スペインの王立造幣局──通称「カサ・デ・パペル」(「紙の家」という意味で、スペイン語版の原題にもなっている)──に侵入する。

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泥棒たちは、警察が予想したようにたんに戦利品をつかんで逃げるのではなく、人質たちとともに立てこもり、印刷機(そしてこのドラマシリーズ)を動かし続ける。11日間そこにとどまり、追跡不可能な紙幣を24億ユーロ印刷することがかれらの目的なのだ。

この筋書きは独創的でドラマチックかもしれない。しかしその巧妙さとは裏腹に、この強盗は実にアナログなものだ。デジタル社会の現代において、「プロフェッサー」ほど創意にあふれる人物の手口とは思えない。決済の分野では、サイバー犯罪との戦いが以前から大きな課題となっているのだ。

画面上であれ実生活においてであれ、アナログ決済もデジタル決済も、盗難や詐欺のリスクをはらんでいる。なぜなら決済はお金の出入り口だからだ。

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