「高額紙幣の廃止」で犯罪撲滅を図った国の末路 インドと北朝鮮がやらかした壮大な経済失策

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とはいえ、犯罪者なら誰しも高額紙幣にこだわるというわけではない。コロンビアの運び屋が400枚の五百ユーロ札を飲み込む20年前、よく知られているように、オランダの醸造王フレディ・ハイネケンが誘拐された。ハイネケンはオフィスを出て家に帰る途中、お抱えの運転手とともにさらわれた。オランダの中央銀行からわずか200メートルの場所での出来事であった。

誘拐犯たちは、追跡されやすく交換が難しいのではないかという懸念から、千ギルダー札(500ドル超の価値)を敬遠した。代わりに、かれらは前代未聞の3500万オランダ・ギルダー(およそ2000万ドル)の身代金を、4つの通貨の中位の額の紙幣で支払うように要求した。不運にも、この選択もまた、身代金を扱いにくくするものだった。身代金が、約400キロもの重さになったからだ。

実にオランダ人らしく自転車で逃走することにしたこの一味は、アムステルダム郊外の林に戦利品を埋めるはめになり、ほんの4分の1ほどを回収したところで、散歩中の人に隠し場所を発見されてしまった。まちがいなく恐ろしい経験をしたであろうにもかかわらず、ハイネケンは21日間の監禁生活を生きのび、話し上手としての名声すら保った。

というのも、彼は後にこの経験についてこう語ったのだ。「犯人たちは私を拷問した……カールスバーグを飲まされたんだ!」。

なぜ政府は手をこまねいているのか?

スタンダードチャータード銀行の元最高経営責任者ピーター・サンズは、『悪者たちにより困難に』(Making it Harder for the Bad Guys)の中で、状況を簡潔に要約してみせた。彼は高額紙幣を「現代経済における時代錯誤」と形容し、「正規の経済活動ではほとんど役割を果たしていないが、地下経済においては重要な働きをしている。皮肉なことに、犯罪者たちが利用するそのような紙幣は、国家が用意しているのだ」と述べた。

では、なぜ一部の国々では、かつてないほど厳格なマネーロンダリング防止規制を銀行に課しながら、自国の高額紙幣が脱税、犯罪、テロ、汚職に使われることには目をつぶっているのだろうか?

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