G7で最下位「日本の労働生産性」がこうも低い理由 「LayerX福島良典×ナレッジワーク川中真耶」
福島:この10年で企業の意識は確実に変わると思います。ただ、私の仮説では、労働生産性の低さは、ユーザーである企業だけの問題ではありません。クラウドサービスの提供者、もっと言えばサービスの開発を担うエンジニアにもあると感じています。
競争の緩さが日本の労働生産性向上を抑制している
——どういうことでしょうか?
福島:日本は経済規模に対して、法人向けクラウドサービスの提供者が少ないのが問題だと感じています。
ある調査によると、アメリカでは企業規模を問わず、一つの会社で100を越えるSaaSを使っているのに対し、日本は平均でも10前後しか使っていません。
これは逆に言い換えると、日本市場にはあと10倍クラウドサービス事業者がいてもいいはずです。つまり、まだまだ競争が激しくないわけです。
その一方で日本のBtoCのサービス市場では、どの分野でも苛烈な競争が繰り広げられています。BtoBサービス提供者の少なさ、提供者間の競争の緩さも、日本の労働生産性向上を抑制していると思います。
川中:SaaSプロダクトをリリースし安定した収益を稼ぎ出すまでに、2年、3年はかかります。しかもこの間、赤字を出しながらも投資を続ける必要もある。
スケールすれば得られる果実は大きいかもしれないけれど、成功するかどうか分からないビジネスにお金と人を注ぎ込むか。それともスケールはあまり見込めないけれど、失敗するリスクが低く確実に収益が取れる受託の事業を営むか。
後者に傾きがちな日本の構造的な問題が、法人向けクラウドサービス事業者の少なさと関係していそうですね。
福島:僕もそう思います。アメリカや中国だと、有望なプロダクトを提供している企業には、一気に人もお金も集まりますが、日本はそこまでのスピード感はありません。これは人の問題だけではないとは思いますが、エンジニア自身のキャリア選択でも、もっと将来への期待値や成長性に投資するという観点を持っても良いと思います。
川中:採用面接などでエンジニアと接していると、確かに自分が使っているサービス、知っているサービスに関心が向きがちで、BtoBサービスへの理解が薄いのを感じます。
実際、エンジニアの取り合いは凄まじいものがありますが、toCを扱う企業に人気が集中しているように思います。当社も、採用でtoC企業に負けることが多いです……。