「奨学金440万円」44歳彼が語る親世代への違和感 学ぶ人が「変わり者扱い」される風潮に思うこと

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転職してみると、仕事の時間にゆとりが生まれました。子育て中だったのでありがたかったものの、それはそれとして暇なんですね……。そうするなかで、大学院での研究を思い出していって。当時の自分はデジタルで表現するアート作品を作っていたんですが、当時の仲間や研究者たちと話し込むうちに、とうとう大学院に戻ることを決意したんです。仕事でUXについて深く研究していたことも、自分にとって大きな糧になっていました」

学生の頃に作品作りをしていた仲間や、仕事で知り合った研究者から「この分野で食っていきたいのであれば、博士になったほうがいい」と言われた船田さんは、悩んだ末に、30歳にしてふたたびアカデミックの世界に戻ることになった。

貯金はあったが、先行きはわからなかったので奨学金を借りることを決意する。

「博士課程で入り直したのが国立大学だったため、入学金は約20万円で、年間の学費は約50万円。3年間で総額170万円程度かかる計算でした。これを、第一種奨学金(無利子)で賄うことにしました。すでに社会人になっていたので、親ではなく私自身の世帯年収を見られたのですが、ちょうど前年に子どもが生まれて妻が働いてなかったこともあり、運よく第一種の審査に通ったんです」

しかし、3年間で借りた奨学金の総額は440万円だったという。授業料と比べると金額が大きく思えるが、そこにはこんな理由があった。

「もともと、博士課程学生向けの特別研究員制度である、日本学術振興会(通称、学振)のDC1も狙っていたのですが、『研究に関連しないアルバイトをしてはダメ』という条件があることを知ったんです。今では少し緩和されてるようですが、DC1の手取りは15万円程度なので、その頃はある意味、苦学生であることが前提の制度設計でした。

家族もいる私にはそういう働き方は現実的ではなく、前職の私立大学でも定期的にアルバイトをしていたので、奨学金を多めに借りることにしたんです。当時はすでに住宅ローンで家を買っていたこともあり、奨学金も『借金がひとつ増えるだけだ』と思ったのもありました」

社会人経験が研究にも生きることに

しかし、社会人としてプロジェクトをまとめていた船田さんは、研究でも着実に結果を出した。

「半年で700万円もの研究費がもらえるという、省庁主催の人材発掘プロジェクトに同じ研究室の仲間たちと応募したんですよ。そうしたら、7人中5人が研究費をもらえることになったんですね。もし、DC1に採用されていたらこの研究費も『収入』扱いされるので、やっぱりDC1は申請しなくてよかったなと思いました」

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