――人を動かすために必要な論点を徹底的に調べ上げたうえで、たとえば、官僚などには「なぜできないのか」を徹底的に問うスタイルだと。
たとえば、ふるさと納税。生まれてから高校を卒業するまで、地方自治体で1600万円ぐらい子どもにお金をかけます。
しかし、いざ高校、大学を卒業し、地方を離れて都会で働くと、地方には1銭もいかない。「自分を育ててくれた地域に恩返しができる仕組みを作りたい」とずっと思っていました。でも、総務省は大反対でした。
「ふるさとの定義があいまい」だとか「受益と負担の原則という税の根幹を揺るがしかねない」など、できない理由を並べます。
私はこんな性格ですから、「本人がふるさとと思ったらどこでもいい」「人生における受益と負担という考え方もあるだろう」と譲りませんでした。
本質的にはこれは絶対作っておかしくない法律だと確信していましたので、そうしたものと戦って、制度を作りました。
「省庁縦割り」はまだまだ残っている
ダムの洪水調整機能も省庁縦割りを打破して高めました。これまで経産省や農水省が所管する電力や農業用水のダムは、大雨のときにも活用されず、洪水を防止する機能を持っていませんでした。
こういったダムを活用し、洪水への対処能力を46億立方メートルから91億立方メートルへと倍増させました。省庁の壁を取っ払うことで、5000億円以上かけた八ッ場ダム50個分の容量を、コストをかけずに確保しました。さらに事前放流の基準も見直して、能力を最大化した治水対策ができるようになりました。
そうすると今度は、国交省が自分から、いままで活用していなかったダムの貯水を使って発電をやりたいと言い始めました。省庁縦割りの壁のために、国の資源が有効に使われていない実例です。
もうひとつは、外国人観光客です。インバウンドを呼び込もうというときも、警察と法務省がビザの緩和に大反対でした。官僚の人たちは「長官、そんなことをしたら大変なことになります。犯罪が多くなります」ってくるわけです。
私はこういう性格ですから「犯罪を取り締まるのが仕事だろう」と。ビザを緩和した途端に、外国人観光客は7年間で840万人から3200万人まで急増しました。消費額が1兆800億円から4兆8000億円くらいになった。
日本中で外国人観光客を取り込むための投資が進み、27年ぶりに地方でも土地の値段が上がりました。
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