日本の「重症の民主主義」を再生させる3つの手段 「#投票に行こう」では変わらない現実を変える

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政治家の注意を目の前の内向き世論だけでなく長い目で見た成果へと振り向けるため、たとえばGDPや平等・幸福度などの成果指標に紐づけた政治家への再選保証や成果報酬を導入するのはどうだろう。

政治家の直面するインセンティブを改造する「ガバメント・ガバナンス(政府の統治)」案に加え、選挙制度の再デザインの提案も数多い。

オンライン投票やアプリ投票はもちろん、世代間格差を乗り越えるための政治家や有権者への任期や定年。「世代別選挙区」や各投票者があとどれくらい長く生きそうかで票を重みづける「余命投票」の導入も考えられる。

若者に限らず無視されがちなマイノリティ・少数派の声を汲み取る企てもある。政治家の男女別定数や、政党や政治家ではなく政策論点ごとに投票を行って自分にとって大事な論点に多くの票を割りふることを許す液体民主主義などだ。

とはいえ、実現可能性は心許ない。既存の選挙で勝って地位を築いた現職政治家がこうした選挙制度改革を行いたくなるだろうか? 無理そうなのは明らかだ。

逃走

そう考えると、民主主義との闘争ははじめから詰んでいるかもしれない。だとしたら、いっそ闘争は諦め、民主主義から逃走してしまうのはどうだろう?

タックス・ヘイブンへの資産隠しなど、国家からの逃走は一部ではすでに日常である。そして思い出してほしい。今や民主主義も、失敗に次ぐ失敗を市民に課す政治的税にも見えることを。だとすれば、タックス・ヘイブンがあるように政治的デモクラシー・ヘイブンもありえるのではないか?

既存の国家を諦めデモクラシー難民となった個人や企業を、独立国家・都市群が誘致したり選抜したりする世界。独自の政治制度を試す新国家群が企業のように競争し、政治制度を商品やサービスのように資本主義化した世界だ。

過激な妄想だと思われるかもしれない。だが、そのような試みが実は進行中である。

たとえば、どの国も支配していない地球最後のフロンティア・公海の特性を逆手に取って、公海を漂う新国家群を作ろうという企てがある。お気に入りの政治制度を実験する海上国家やデジタル国家に、億万長者たちから逃げ出す未来も遠くないかもしれない。

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