現代アートの世界にも広がる「加害者」の強迫観念 日本人が知らない「ドイツの贖罪」が隠す歴史

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:この絵がユダヤ人への憎悪を引き起こすとか、好戦的な反ユダヤ主義の意図を込めたものだというドイツでの批判は行きすぎの感がある。その背景には、ホロコーストに関するドイツの記憶コンプレックスがある。20世紀の欧州における最悪の犯罪(ホロコースト)の加害者であることを記憶しなければならないというドイツ人の強迫観念を、ただとがめるのは難しい。そうした強迫観念を日本人に見出せればいいのに、と考えもする。だが、そこまでだ。

イスラエルはすでに、パレスチナやヨルダン、シリアなど隣人の土地を征服する植民地主義的な国家となって久しい。イスラエルという国家に対する批判を反ユダヤ主義と同一視するドイツの記憶文化は、ドイツ人が自分たちを良心的だと見せるためのジェスチャーとなっている。それは結果的に、イスラエルの植民地主義を擁護するという深刻な問題を抱えている。「犠牲者意識ナショナリズム」の弊害が端的にうかがえるものだ。

なぜ表現の自由の批判が出ないのか

澤田:作品撤去には、「表現の自由」という観点からの批判が出ても不思議ではありません。でも、ドイツでは問題にならなかったようですね。

:表現と思想の自由をどこまで認めるかという社会的なコンセンサスは国ごとに違う。その点を理解しておくことが必要だ。ドイツをはじめとする大部分の大陸欧州の国はホロコースト否定論を法律で処罰対象にしているが、イギリスやアメリカは学問的自由の領域に任せている。

ホロコースト否定論者として有名なイギリスのデイヴィッド・アーヴィングが2005年にオーストリアで逮捕された時の反応は、その典型だろう。アメリカ歴史学会はこのとき、ホロコースト否定論については学問的討論の場に任せるべきだとして釈放を求める声明を発表した。アーヴィングを否定論者だと批判し、逆に名誉毀損で訴えられて苦労した経験を持つアメリカのホロコースト研究者デボラ・リップシュタットも、その声明に署名している。

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