公立学校では非正規雇用の教員が増え続けている。その数は全国の公立学校で5~6人に1人に上る。教師という職業に、いったい何が起きているのか。
特集「『非正規化』する教師」の第6回は、初任者研修すら受けられずに教壇に立ち続けざるを得ない非正規教員の現実に迫る。(過去の記事はこちら)。
首都圏の公立小学校で非正規教員として働く香川隆二さん(仮名)は、教員1年目のときのことが忘れられない。大学4年の時に教員採用試験を受けたが不合格となり、翌年は地元の小学校で臨時的任用教員(常勤講師)として働くことになった。だが、その1年目は散々なものだった。
「2年生の学級担任になりましたが、何をやってもうまくいきませんでした。日々の授業も、子どもたちへの指導も自己流、見よう見まねでやっていましたからね……。すぐに学級崩壊に近い状態となって、教頭先生にもクラスに入ってもらいながら、何とか1年を乗り切りました」(香川さん)
小学校では常勤の非正規教員の大半が1年目から担任を持つ。比較的落ち着いたクラスを受け持つケースが多いが、時に校内人事のなりゆきで難しいクラスを持たされることもある。
何の研修もないまま、教壇に立ち続ける
「非正規教員は、何の研修も施されないまま、教壇に立たされ続けます。そんな仕組み自体に無理があるのではないでしょうか」と香川さんは振り返る。結局この年はクラス運営で手一杯となり、教員採用試験の対策時間もろくに取れず、不合格となってしまった。
香川さんの学校にはもう一人、1年目の教員がいた。同じ大卒だが正規採用、そのため「初任者研修」があり、校内でメンター役の教員から指導を受けたり、時に教育センターに出向いて講義を受けたりしていた。
「同じ1年目でも、職場での扱いがまったく違っていました。向こうは大事に『育成』されているのに対し、こっちは完全に『放置』されている感じです。当時は、『試験に合格できなかった自分が悪い』と思っていましたが、今思えば少し酷い扱いだと思います」(香川さん)
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