小学校の教員は、年間1000コマ近い授業を一人で受け持つ。授業内容はどれ一つ同じではなく、すべての授業に入念な準備が必要となる。30~40人もの子どもたちを統率しながら、これら一つひとつの授業を成立させていくためには、高度な技能を要する。
だが、どの教員も大卒1年目から学級担任を任される。考えてみれば無理のある話で、民間企業で言えば新入社員が一人で得意先を回るようなものだ。だからせめてもということで、1年目に初任者研修が行われ、後追いでの「育成」が行われる。
初任者研修は、国が自治体に義務付けている法定研修で、校内で年間300時間、校外で25日間の研修が行われる。内容は授業に関わることから服務に関することまで幅広く、教員として必要な知識やスキルをみっちりと叩き込まれる。「300時間+25日間」というボリュームを見ても、一人前の教師にするべく手厚く育てていこうという意図が感じられる。
ところが、同じ1年目でも非正規教員には初任者研修がない。最近は、各自治体が独自に研修を実施しているケースもあるが、その内容は初任者研修とは比べ物にならないほど薄い。
放置された結果、1年も経たず辞めていく人も
この状況について、あるベテラン教員が次のように指摘する。
「研修も施さない人間を教壇に立たせること自体、公教育としての責任を果たせていない。正規であろうと非正規であろうと、子どもたちを相手に授業をするという点では同じですからね」
また、別のある小学校の中堅教員は、「採用側に非正規教員を『育成しよう』という意識はありません。放置された結果として、1年も経たずに辞めていく人も少なくありません」と話す。一般的に1年以内の退職は職業的な「ミスマッチ」によって起こる。だが、公立学校においてはこれが「放置」によって生じているとすれば、看過できない。
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