それ「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」かも 「食後に運動」で発症、知らずに重症化する例も

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「食物依存性運動誘発アナフィラキシーは、特定の食べ物と運動などの行為が組み合わさったときに表れる急性のアレルギー反応です。2つの要因が加わって初めて生じる症状なので、原因になかなか気づけず、同じことを繰り返してしまう人が少なくありません」

こう話すのは、アレルギー疾患に詳しい皮膚科専門医の矢上晶子さん(藤田医科大学ばんたね病院総合アレルギー科教授)だ。運動以外では、風呂やサウナで汗をかく、痛み止め(非ステロイド抗炎症薬)を飲むといった行為で発症することがある。

食物アレルギーといえば、“子どもが発症する病気”というイメージが強いが、食物依存性運動誘発アナフィラキシーに関しては、学童期(6~12歳)以降に見られ、大人になってから突然発症するケースも多い。高齢者でも発症し、男性に多い傾向がある。

Aさんも「花粉症などのアレルギーはありますが、この年齢になって食物アレルギーを発症するとは思いませんでした」と話す。

「普段からよく食べているものや、これまで何の問題もなかった食材でも、運動などと組み合わさることで、ある日突然、症状が表れる。これがこのアレルギーの厄介なところです」(矢上さん)

小麦や甲殻類、果物が原因に

そもそも食物アレルギーは、消化が不十分なタンパク質が腸で異物と認識され、排除しようと反応が強く起こった状態をいう。原因となる物質はさまざまだが、食物依存性運動誘発アナフィラキシーでとくに多いのが、小麦と、エビやカニなどの甲殻類、果物だ。小麦では成分の1つであるグリアジンが原因となりやすい。Aさんもまさにこのグリアジンが問題だった。具体的な症状は、全身のじんましんやかゆみのほか、むくみ、息苦しさ、下痢などだ。

では、なぜ食後に運動したりサウナに入ったりすると症状が出るのだろうか。

「それは、体を動かすことでアレルゲン性を持つタンパク質の吸収が高まるからだと考えられています。サウナも同じ理屈です。ちなみに、症状の多くは特定の食べ物に含まれるアレルギーの原因となるタンパク質が体に入ってから2時間以内に起こり、4時間までは注意が必要とされています。昔から“食後に運動してはいけない”と言われるのには、きちんと理由があります」(矢上さん)

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