それ「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」かも 「食後に運動」で発症、知らずに重症化する例も

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食物依存性運動誘発アナフィラキシーの最大の問題は、この病気が一般の人にあまり知られていないことだといえる。また症状は強いものの短時間で治まることが多いため、そのまま放置してしまう人が少なくないという。結果的に原因解明が遅れ、同じ行動を繰り返す中で、重篤化するケースもある。

「重篤になると、血圧が急速に低下したり意識障害が生じたりします。これがいわゆるアナフィラキシーショックで、一刻も早く救急車を呼んで緊急搬送しないと、大事に至ることがあります」(矢上さん)

早期発見につなげるためには、心当たりがあったらまずは病院で診てもらうこと。それができて初めて必要な対策を講じることができる。

では、何に気を付けたらいいのだろうか。「この病気で受診される人はとくに、食事が発症のきっかけの1つだと思っていない人がほとんどなので、原因を探るのにとても苦労します」と矢上さんは話したうえで、こうアドバイスする。

まずは食事のメニューや食材をメモ

「食物依存性運動誘発アナフィラキシーの診断では、問診で得られる情報がとくに大事になります。もし運動後にじんましんや息苦しさなどが出たら、その前に何をしていたか、何をどれだけ食べていたか、できるだけ細かく具体的に思い出してほしい。食事のメニューだけでなく、できれば“どんな食材が入っていたか”までメモに残しておき、それを持って受診されるといいでしょう」

こうした問診とあわせて受けるのが、血液や皮膚の検査だ。体内の「特異的IgE抗体」を検出することで、問題の食材が特定できる。

「小麦依存性運動誘発アナフィラキシーでは、ω-5グリアジンにIgE抗体が陽性を示しやすいので診断がつきやすいのですが、より診断を確実にするために皮膚テスト(プリックテスト)を実施します。この問診と血液検査、皮膚テストの結果から診断を確定させます」と矢上さん。

確定診断がついたら普通は治療に入るのだが、残念なことに食物依存性運動誘発アナフィラキシーには症状を抑える治療(対症療法)はあるものの、根本的なアレルギー体質を改善することは今のところできない。そのため、病気と付き合っていくという意識が大事になる。

幸いなことに、原因となる食材を極力摂らないようにする除去食が必要な一般的な食物アレルギーと違い、食物依存性運動誘発アナフィラキシーは運動などの行為とセットでないと発症しないため、そこまで食事に神経質にならなくてもよい。

むしろ正しい診断を受けて、適切な生活指導や薬剤の処方を受けておくことが大切だ。具体的な対応は次ページの2つになる。

次ページ食物依存性運動誘発アナフィラキシーへの2つの対応
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