1つ目は、アナフィラキシー補助治療剤(アドレナリン自己注射薬)の携帯だ。アナフィラキシー補助治療剤はアナフィラキシーが起こったときに太ももなどに注射する薬で、医師の治療を受けるまでの間、症状の進行を一時的に緩和し、ショックを防ぐ。自分の体に針を刺すのは慣れないと勇気がいる。そのため、事前に医療機関でレクチャーを受ける必要があるが、つねに身に付けておけば安心だ。
またショックにまで至らない症状の場合には、抗ヒスタミン薬かステロイド薬をすぐに服用する。矢上さんによると、発症を繰り返している患者さん曰く「予兆がわかる」ので、「あ、来たな」と思ったら早めに飲むのがポイントだという。
2つ目は、食物依存性運動誘発アナフィラキシーと正しく付き合うための、医師選びだ。矢上さんは「患者さんのなかには、食後の運動で何度も救急搬送されているのにもかかわらず、その原因がわからないために同じ行為(運動など)を繰り返してしまっている人もいます」と話し、アレルギー専門医への受診をすすめる。
専門医はアレルギー専門医の認定機関でもある日本アレルギー学会のホームページが参考になる。このほか、2014年に成立した「アレルギー疾患対策基本法」に基づき、各都道府県にアレルギー疾患医療拠点病院が設置されている。こうした拠点病院のなかから、住んでいる場所に近い病院を選ぶのも1つの手だ。
根治は難しく病気と付き合う意識を
前述したとおり、食物依存性運動誘発アナフィラキシーは今のところ根治は難しい。そのため予防策を取りながら付き合っていくことになる。
とはいえ、「基本的には特定の食べ物を摂ることと、運動や痛み止め(非ステロイド抗炎症薬)を内服するなどの行為をセットにしなければ、普段通りの生活を送ることができます。そこまで怖がる必要はありません」と矢上さんは言う。
「むしろ、極度に怖がって日常生活に支障が出るほどの食事制限をすることのほうが問題です。万が一に備えて薬剤を携帯し、医師の指導を受けながら、安全に食生活を楽しんでいくほうが大事だと思います」(矢上さん)
(執筆:ライター・松岡かすみ/編集部・山内リカ)
藤田医科大学 ばんたね病院 総合アレルギーセンター センター長
矢上晶子医師
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