偏見だらけの「エイズ」劇的に進化した治療の実際 1日1錠の薬の服用で発症せずに暮らせることも

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知られざるエイズの最新状況とは?(写真:Pornpak Khunatorn/ iStock / Getty Images Plus)
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エイズ(AIDS:後天性免疫不全症候群)をとりまく状況が、様変わりしている。

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染しても、エイズを発症する前に適切な治療を受ければ、平均寿命は一般の人とほぼ変わらないほどまでに延びた。そして何より、感染している女性が出産しても子どもにウイルスの感染が及ばないことも十分にわかってきたのだ。

先日は、アメリカでは臍帯血(さいたいけつ)を用いた新しい幹細胞移植治療によって、女性のHIV治療に成功したというニュースも流れた。

治療法が格段に進化し、HIV陽性者たちのQOL(クオリティー・オブ・ライフ)も向上した一方で、2020年のエイズ患者数は345人と4年ぶりに増加(国立感染症研究所『IASR Vol.42』による)。これはコロナ禍に入ってHIV検査が滞り、早期発見が遅れているためともいわれている。

LGBTQなどが周知され、性の多様性が認知されはじめた今だからこそ、HIVやエイズについて身近な問題として知っておいたほうがいいだろう。

知見に乏しかった当初からはかなり変わった

そもそもエイズとはどんな病気なのか。

エイズが明らかになったのは、1981年。アメリカ・ロサンゼルスで肺炎を患った男性たちに、免疫不全という状態が起こるようになったことをきっかけに発見された。HIVが発見された当初は知見に乏しく、未知の感染症への恐怖から誤った情報が流布した。特に男性同性愛者の間で感染が広まったため、彼らへの偏見が強まることとなった。

HIVは精液や腟の分泌液や、血液を介して感染する。性交渉で広まりやすいのは、そのためだ。陽性者の女性が妊娠すれば、妊婦中や出産、授乳で子どもにうつる母子感染のリスクもある。ただ、今なお感染が広がっている新型コロナウイルスと比べ、感染力は圧倒的に弱く、日常生活で感染する可能性はほぼゼロだ。

だが、HIVに一度、感染するとウイルスは体から排除されることはなく、治療しなければどんどん増殖していく。HIVはリンパ球という免疫細胞に感染して細胞を破壊していくので、やがて体の免疫が著しく低下し、エイズを発症する。そうなると治療法はなく、日和見感染(免疫があれば取るに足りない病原体への感染)や悪性腫瘍を患ってしまう(下図)。

HIV感染症の臨床経過(グラフ:『抗HIV治療ガイドライン(2021年3月発行)』より)
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