なぜ日本人は世界一「お客様に超へりくだる」のか 「お客様は神様」の日本vs「余計なお節介」の韓国

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これらの接客文化の異なる特徴を鑑みたとき、両国間のコミュニケーションへの影響はどのようなものになるだろうか?

まず韓国人は、日本人に対して接客するときは、時に過度なまでに謙虚な態度が、信頼獲得と維持に重要であると理解しよう。

これらは儒教文化の影響か、先生になりたがり「上から教えてあげたがる人」が比較的多いように思われる韓国人が、とくに注意しなければならないことである。

たとえ正しいことを言っていても、「なれなれしい」か「上から目線」で押し付けがましい態度であれば、内容の是非を問わず、日本人から大きな反発を受けるのはほぼ間違いないだろう。謙虚さの裏返しは、相手の自主性の尊重なのだ。

逆に日本に関していえば、韓国人は時に人間関係の距離を詰めるのが速すぎて、なれなれしかったり、無礼だと感じることがあるかもしれない。しかし、これは相手を軽んじているわけではなく、「公私の表裏が、日本ほどないのだ」と好意的に解釈していただけると幸いだ。

「相手」を知れば、「余計なイライラ」はぐんと減る

日韓関係が悪化するたびに日本のメディアで「タクシー乗車拒否!」などと煽情的にはやし立てられるが、先ほども述べたように、これも大きな間違いである。韓国では食堂のおばちゃんを「社長様」、タクシーの運転手さんを「運転手様」と客が呼ぶ文化があり、「お客様は神様」ではないのだ。

とくに夜の(運転手さんの)帰宅時間が近づけば、韓国人も乗車拒否をくらうのは日常茶飯事なのだと知っておけば、「サービス拒否された!これは反日感情や!」などと、不必要にカリカリすることも、少なくなることだろう。

拙著『そっか、日本と韓国って、そういう国だったのか。』への書評の中に、「日韓関係でカリカリしている人へのトランキライザー(精神安定剤)」というコメントがある。両国の「自国から見えていない実態」を少し知るだけで、腹を立ててきたことや誤解も、いっきに消え去ることが多いものなのだ。

韓国にプンスカ怒られている方と、本棚が嫌韓本で盛大に埋まっている方、そして「どーでもいーですよ。関わり合わないのが一番です」という方に、ご一読いただければ幸いである。

ムーギー・キム 『最強の働き方』『一流の育て方』著者

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Moogwi Kim

慶應義塾大学総合政策学部卒業。INSEADにてMBA取得。大学卒業後、外資系金融機関の投資銀行部門にて、日本企業の上場および資金調達に従事。その後、大手コンサルティングファームにて企業の戦略立案を担当し、多くの国際的なコンサルティングプロジェクトに参画。2005年より外資系資産運用会社にてバイサイドアナリストとして株式調査業務を担当した後、香港に移住してプライベート・エクイティ・ファンドへの投資業務に転身。英語・中国語・韓国語・日本語を操る。著書に『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』と『一流の育て方』(母親であるミセス・パンプキンとの共著)など。『最強の働き方』の感想は著者公式サイトまで。

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