スタッフからは不安な声が続出した。
「スタッフからは『今後サロンどうするんですか』『続けるんですか』『もし店で感染したらどうしますか』という声が出ていて。正直、(ネイルサロンを)もうやめてしまおうか、とも考えました。コロナ融資を受けることを検討していましたが、借りるよりここでやめてしまったほうがよいのでは……とかなり悩んだんです」
しかし、スタッフは20名以上いて、簡単にはやめられない。「今はコロナで厳しいが、いずれは落ち着いて客足も戻ってくるだろう」と思い直した。
そして、日本政策金融公庫から「新型コロナウイルス感染症特別貸付」の借り入れを決めた。
「融資が通ったので、ひとまずキャッシュアウトは回避できたものの、本当の厳しさはここからでした。休業の後、(2020年)6月1日から営業再開だったのですが、売り上げが激減。6月の売り上げは前年度比50%になってしまったのです。7月は同60%、8月は同70%、9月は同80%まで戻りましたが、その後80%前後で停滞になりました」
このような時期だからこそ、中長期的な視野で、広告宣伝費や人件費を落とさずに会社の維持を第一に考えた。広告宣伝費や人件費を落としてしまうと、需要が戻ったときにそれを戻すのに時間がかかり、赤字が大きくなるリスクがあった。
スタッフ全員で施策を考え次々に行動
「とにかく、今の需要落ち込みをカバーするために、店長を中心にスタッフ全員で施策を考えました。そして、次々に行動に起こしていったんです」
もちろん、スタッフやお客様の健康や安全を守るために、サロンの感染対策は最優先だった。アクリル板や消毒液の設置、定期的換気、コロナ感染防止のための社内ルールやガイドラインも制定。PCR検査補助制度から抗原検査キットの常備なども実施した。
そのうえで、行動に起こしていった施策は以下だ。
・ネイルチップの通販開始
・ジェルネイル素材を使った「スマホアートカバー」販売
・爪に優しい「パラジェル」の導入
・仕事でネイルを外さないといけない方向け「はがせるネイル」導入
・ハンドケアのための「パラフィンパックメニュー」追加
・リピートにつなげるための予約キャンペーン
・航空会社のCA経験者を招いての接遇研修の実施
・ネイルスクールの開始
・空き施術台を利用したサロンレンタルの開始
正直、物販ではあまり売れなかった物も多い。しかし大切なのは、厳しい状況の中でも現場の声を取り入れながら「みんなでがんばろう、みんなで乗り切ろう」とすることだった。
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