ネイルサロン経営者3人が味わったこの2年の苦悶 売り上げ激減、時短、閉店を経て乗り越えてきた

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3人目は、株式会社オトコネイル代表の坂下隆子さん。坂下さんが展開する「メンズネイル総本店・オトコネイル」は男性専用のネイルサロンで、ジェルやマニキュアのようなサービスは一切ない。男性の爪に特化した「健康的かつキレイにみせる」独自技術で、都内5カ所と大阪1カ所に店舗を構える。

「2020年4月の1回目の緊急事態宣言、そのときが一番キツかったです。全店舗の予約表が一気に真っ白になりました。当時、霞が関に店を出していたのですが、外に出るとビックリするくらい人がいない。これはダメだ……と愕然としました。売り上げも3分の1以下に激減。そこで六本木店と霞が関ビル店は4月と5月は休業に切り替えたんです」

コロナがどのくらい続くのかも、政府の対応もまだわからない状況。先行きのわからない不安のなか、さまざまな状況を考えた。

「政府の助けがまだゼロだったときです。『もし売り上げゼロだったとしたら、どのくらいキャッシュはもつのだろう』と考えました。一瞬、経営を続けられるのだろうか、とも考えました。でも冷静に考えたら、『やるしかなかった』です」

日本政策金融公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」では、大きな金額の融資を受けることができた。それが万が一のときのセーフティーネットとなり、心の安定にもなった。そして、「必ず乗り越えてみせる」と決心した。

「店舗は1名体制にし、閉店時間はもともと20時だったのを18時までに短縮しました。すると今度は、多くのスタッフが『何もすることがない状態』になってしまって。このままではスタッフの不安も大きくなり精神的にもよくないと判断。短期事業として、いい生地を使った『布マスク』の生産と販売も行うようにしました」

リピーターからの声で新人の接客を全部やり直した

キャンセル続きだったが、それでも数件の予約は入っていた。それが一部のリピーターの顧客だった。オトコネイルでは、お客様の9割がリピーターなのだ。

「4月のある日、リピーターのお客様からご意見をいただいたんです。『緊急事態宣言のような状況でも、なぜ私たちがここに来るのか? その気持ちをわかってほしい。家にずっと引きこもっているのはひどいストレスだ。2週間に1回、ここに来ることがどれだけの楽しみか。だから下手な接客は受けたくない』というものでした。その後、『新人さんたちの教育をもっとしておいて。サービスは人だよ』とご指摘を受けたんです」

次ページ「接客に関する指摘」が多く入っていた
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