アラサーのための戦略的「人生相談」--この連載はマニュアル的すぎませんか?(その2)


広瀬 一郎

■■第9回 この連載はマニュアル的すぎませんか?(その2)

水本満夫・仮名 29歳 コンサルティング会社勤務

広瀬:「マニュアル」を軽視する者は、マニュアルに泣きます。

たとえば、1月のテーマだった「プレゼン」ですが、マニュアル的なもの、あるいは「チェックリスト」みたいなものは、有効ですし、むしろ不可欠だと言ってもいいくらいです。

再確認しておきますが、プレゼンの目的は「説得」でしたね。「説得」の極意は確かにあるし、それを形式知としてマニュアル化はできるんです。ただし、言うまでもなく「マニュアル」は万能でもないですし、またやり方がわかったからって、すぐ実践できるというわけではありません。マニュアルを使いこなすには、一定の能力が必要です。あなたが説得されるときって、どんなときですか?

水本:相手の言い分に納得したとき、でしょうか。

広瀬:そうですね。人が納得するときは、基本的に「自分が納得する基準」を満たしたときですね。どんなによい提案でも、その内容が自分の判定基準を満たさなければ検討しないでしょう。ここがポイントです。説得する相手の「納得する基準」を考えることです。

その基準に合わなければ、自分たちの言い分を聞く耳を持ちません。人は「聞きたいこと」以外は聞かないんですよ。聖パウロは「心に愛のない言葉は相手の耳に届かない」と言っています。

水本:それって、当たり前すぎませんか?

広瀬:言いますねえ。そう、当たり前の「常識」です。が、そもそも「常識」って、なぜ必要かっていうと、「皆が当然だと思っていることを、当然の如くできている」のであれば、常識なんて不要です。

「知っていること」と、それが「できている」というのは明らかに違うんです。皆が当然だと思っていることなのに、忘れがちなので、ときどき「常識」という名で思い出させる必要がある。それが常識というものの本質です。

水本:言われてみれば、確かにそうですね。常識って忘れがちなことなので、ときどき思い出す必要があることなんですね。

織田信長が今川義元に勝てた理由

広瀬:「相手の基準を見つけ出せ」は、「説得の常識」なんです。これを形式知として知っているかどうかはプレゼンの成否を左右します。

でもこれではまだ十分とはいえません。実は、プレゼンの上級者はさらにその上を行くんですよ。これも知っているのと知らないのとは、エライ違いなんですが、何だと思いますか?

それは、説得しようと思う相手に「自分が納得する基準を与える」ことなんです。戦略の常道の1つに、「自分の得意な領域」に持ち込む、があります。「得意な領域」あるいは「優位な領域」のことを経営学では「ドメイン」という言い方をします。

織田信長が圧倒的な戦力の差にもかかわらず、なぜ今川義元に勝てたのか。

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