アラサーのための戦略的「人生相談」--この連載はマニュアル的すぎませんか?(その2)
それは「桶狭間」という地形が、「兵力の差」という要素を無効にしたからです。狭い道だと大軍の展開ができないでしょ。
かつて、「日の丸飛行隊」と言われた日本のスキーのジャンプ競技が、国際大会で突然弱くなったのは競技ルールが変更されたからです。「スキー板の長さは身長に比例して決まる」という新ルールは明らかに日本に不利なもの。絶好調時の荻原健司でもこれでは勝てません。欧米のスキー競技団体が、日本に不利なルールを設定したのは明白です。
リスクが日常的な欧米では、「戦略」的な対応に長けていなければ生き残れません。自分に有利な状況を作り出すのは、まさに戦略の常道です。
1990年代の米国が「グローバルスタンダード」と言う基準を設け、世界に広めましたが、そのうちのいくつかは明らかに日本狙いでした。われわれは与えられた条件の中で頑張るのが美徳だと信じていたんですが、戦略的には明らかに向こうが一枚上手でした。何しろこちらは憲法を「不磨の大典」として神棚に上げて拝んでしまう国民性ですから、ルール変更を1つの選択肢として考える文化がないのです。
プレゼンする相手先に、「選択の基準」を提示することは、この「ルールの提示」にほかなりません。言い方を換えれば、これこそが「フレーム・セッティング」なんですよ。
有利な領域に持ち込むといっても、決して相手をだますということではありません。分野が専門的であればあるほど、門外漢には判断基準があやふやで、決めるほうだって本音を言えば不安だらけなんです。
それは、先方のオリエンテーションで大体の判断がつきます。きっちりしたオリエンテーションや提案依頼書がきちんと書ける人はそんなに多くはありません。
それがわかっている「できる人」であれば、相手の提示したオリエンあるいは提案依頼書をそのまま鵜呑みにせず、まずは整理してあげるんです。つまりフレームのやり直しをしてあげるわけです。相手も助かって、顔には出さないかもしれないけれど、きっと喜んでくれるはずです。
ですから、できるだけオリエンテーションを受けたら早い段階、プレゼンの事前段階でしてあげたほうがいい。それが言えるまでの関係でなければ、プレゼン当日の冒頭の「オリエンの確認」時に、条件の整理をしてあげ、相手の立場に立った「選択基準」を示してあげると親切です。
これが必勝のカギ、とまで言うと「必ず儲かる」とか、「楽してわかる経済学」みたいで軽く聞こえて嫌なんですが(笑)。
1955年生まれ。東京大学法学部卒業。80年、電通入社。トヨタカップを含め、サッカーを中心としたスポーツ・イベントのプロデュースを多数手掛ける。2000年に電通を退社し、スポーツ・ナビゲーションを設立。その後、独立行政法人経済産業研究所の上席研究員を経て、04年にスポーツ総合研究所を設立し、所長就任。江戸川大学社会学部教授を経て、多摩大学の教授として「スポーツビジネス」「スポーツマンシップ」を担当。著書に『Jリーグのマネジメント』『スポーツマンシップ立国論』など。現在東京と大阪でスポーツマネジメントスクールを主宰し、若手スポーツビジネスマンを育成している。
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