少し前になるが、「年収200万円」がTwitterのトレンドに上がった。とあるムックのタイトル『年収200万円で豊かに暮らす』という言葉に反応したものだ。
曰く「年収200万円では豊かに暮らせない」「そもそも200万円しか給料がもらえないこと自体がおかしい」「その年収じゃ怖くて病院へもいけない」「200万円で我慢しろと言うのか」と、なんとも手厳しい言葉が並んだ。いちいちごもっともである。
実物のムックを見たが、誌面に登場する人が必ずしも年収200万円というわけではない。200万円とは、いわば高収入ではないことの「記号」でしかなく、編集部としては「読者の皆さんよりはちょっと少ない年収」のつもりだったのだろうが、現実はまったくそうではないようだ。
告白すると、雑誌編集者時代に節約記事やムックを作ってきた筆者も、似たような言葉は散々使ってきた。とくに「お金がなくても豊かに暮らせる」というタイトルは鉄板だったし、「年収300万円でも100万円貯まる」なんて、もう何度見たことか。
2003年、森永卓郎氏の本では「年収300万円」だった
その当時、森永卓郎氏の著書『年収300万円時代を生き抜く経済学』(2003年)が出版され、大いに話題を集めた。当時は300万円が「衝撃的に低い年収」の象徴で、雑誌作りの現場としても「少ない年収でも頑張って貯めている人」を取材しようとしたものだ。
打ち明け話をすると、300万円といっても額面ではなく手取り額でよしとし、かつ300万円台ということは380万円でも許容された。そのくらい年収300万円は一般的な事例という空気ではなかったという記憶だ。
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