音楽大学の凋落が誰でもパッとわかる納得の理屈 需要供給の法則でなくゲーム理論で説明できる

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音楽業界の問題点をゲーム理論で分析してみます(写真:Ushico/PIXTA)
銀行員から音楽大学に転職し、現在は音大生や音楽指導者に対して「キャリア戦略」や「お金との付き合い方」を教えている著者が、日本の音楽教育が置かれている現状を解説。『音大崩壊~音楽教育を救うたった2つのアプローチ~』より、毎年学生数が減り続けている音楽大学を復活する戦略と、日本における芸術教育のあり方を考えていきます。

音楽業界の発展が遅れた理由は「ナッシュ均衡」

「レジャー白書2020」(日本生産性本部)や2021年度の「わが国スポーツ産業の経済規模推計」(スポーツ庁・経済産業省監修)などによると、現在日本の音楽産業の市場規模は約5500億円、また音楽教育を担う音楽教室は1200億円前後の市場規模となっています。

この金額は、実はここ20年ほどほとんど変わっていません。大きいと見るか小さいと見るかです。

たとえばスポーツ業界の市場規模は1985年から上がり続けて2020年では8兆7000億円、また音楽教室と対比する例としてスポーツジムの市場規模を見ても約5000億円ですから、大きな差があると言わざるを得ません。

なぜ業界としての発展が遅れたのでしょうか? 

これは経済学の原理からも明らかです。中学の社会科で習った「需要と供給の法則」で考えれば、個々が競争し合うことで市場の需要と供給が均衡し、適切な資源配分がもたらされる、となりますが、この場合、それは通用しません。

というのも、この場合の競争は個々の企業・団体間で起きる前に、趣味に費やす時間をスポーツ業界と音楽業界で奪い合うといった形の団体戦が先に展開されるからです。

つまり、音楽業界はCDの販売数、コンサートなどの動員数、音楽教室の集客数などを、同じ業界内で競い合っており、全体のパイを広げることをしてこなかったのです。

コロナ禍では、この業界パワーがかなり目立つ形で表に出ました。GOTOキャンペーンは、観光業界が業界をあげて陳情した成果ですし、飲食店への補助金も同様です。日々の営業ベースでは近隣のお店はライバルですが、休業要請に応える一方で政府から補助金の支給を受けるためには、ライバルと結束して当局に陳情する必要がある、ということのわかりやすい事例ではないかと思います。

次ページ団体の結束が弱く、内部競争が激しいほどパイは縮小する
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