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音楽大学の凋落が誰でもパッとわかる納得の理屈 需要供給の法則でなくゲーム理論で説明できる

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  • 大内 孝夫 名古屋芸術大学芸術学部教授
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たとえば音楽大学を例に、大学同士が競い合うほうがいいか、協力し合うほうがいいか、学費で考えてみたいと思います。

学費を上げないほうがよい理由

単純化のため、音大はA、Bの2校とし、両校は同じタイプの大学で、学生がどちらに行くかは学費に左右されることとします。現在両校は、学費を下げるか据え置くかで悩んでいる、という設定です。その行動を(A、B)で表すと、行動の組み合わせは(据え置き、据え置き)、(据え置き、値下げ)、(値下げ、据え置き)、(値下げ、値下げ)の4つになります。

この4つの行動結果としての両校の学費収入の増減は、それぞれ次の通りです。

・据え置き、据え置き ⇒ ±0億、±0億
・据え置き、値下げ ⇒ ▲3億、+3億
・値下げ、据え置き ⇒ +3億、▲3億
・値下げ、値下げ ⇒ ▲2億、▲2億

つまり、A音大は自分だけが値下げできるのであれば実施したいのですが、B音大がどう動くかで結果が大きく変わってしまいます。思惑通りBが動かなければ3億の収入増につながりますが、Bも値下げしてくると逆に2億も減ってしまいます。収入が減るのは困るので据え置こうと考えますが、Bに学費を下げられてしまうと、今度は3億減の最悪の事態です。

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最悪は避けたいとAは値下げを決断し、それを知ったBも値下げに踏み切り、さらにAは値下げし、Bも追随……AとBは競合関係にあるので、この後の泥仕合が繰り返されることになります。これを経済学では「非協力型のゲーム理論」といい、相手が戦略を変えない限り、それ以上利益を大きくできない状態(ここではAもBも学費の据え置き)を「ナッシュ均衡」と呼んでいます。

これは、いつまでもいがみ合っていないで、競合だと思っている相手と協力し合ったほうがお互いお得ですよ、ということで、今の音大の状況にピタリと当てはまる気がするのです。

これではこのままじり貧の一途。そろそろ音楽大学は業界として結束し、事にあたる時期に来ているのではないでしょうか。

前々回:音楽大学がここまで凋落してしまった致命的弱点(6月22日配信)
前回:スポーツ庁はあるのに、そういや音楽庁がない訳(6月29日配信)

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