音楽大学の凋落が誰でもパッとわかる納得の理屈 需要供給の法則でなくゲーム理論で説明できる

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スポーツジムであれば、一般社団法人日本フィットネス産業協会(FIA)などを通じて、業界として感染症対策のガイドラインを設けて徹底を図る一方で、事業継続や雇用維持のための支援交渉を行政との間で行っています。このような団体がなければ、全体として発展したい、苦境のときに助け合いたい、と思っても身動きが取れません。国会議員なども業界団体から支持が得られれば得票に直結しますから、業界団体の意見にはしっかり耳を傾けます。

このような話は経済学では需要供給の法則ではなく、「ゲームの理論」で説明されます。
つまり団体戦では、団体の結束が弱く、団体内の競争が激しければ激しいほど、その団体全体のパイは縮小する、ということが知られており、このような状態を「ナッシュ均衡」と呼んでいます。

「ナッシュ均衡」がもっとも顕著な形で現れているのが、音楽大学です。

音楽大学の学生数は、全体としてここ20年減少の一途を辿ってきました。文部科学省の「学校基本調査」によると、1990年には2万2053人だった音楽大学の学生数は、2020年には1万5592人に減っています。とくに2000年からの減少が顕著で、この20年で3割以上も減少しているのです。

この理由は、多くの音楽大学は、音楽を学びたいと思っている数少ない学生の獲得競争に明け暮れてきたからだといえます。「ナッシュ均衡」の教科書みたいな実例です。

体育大学の学生数は音大とは対照的に増えている

一方、体育大学は、「公益法人全国大学体育連合」、「一般社団法人全国体育スポーツ系大学協議会」などを通じて、各大学が協力してスポーツ教育の普及に努めています。スポーツトレーナーや指導者の認定制度を制定し、その取得を促すことなどにより、生活基盤を構築しやすくすることで学生の確保を図っています。

文部科学省の「学校基本調査」によると、体育関係学科の学生数は1990年に2万4292人でしたが、2010年には3万1097人、2020年には3万8626人と着実に増加しています。

このように表向きは競合関係にある同種の大学も、協会の設立などを通じて結束していけば、厳しい少子化の時代も乗り越えていけるのですが、音大はその選択をしませんでした。激しく競争して流した汗はマイナスに作用し、結果として音大全体の学生数は大幅に減少したと考えられます。習い事としての音楽教室がスポーツジムに大きく水をあけられているのも、同様ではないでしょうか。

次ページ音大同士で競うほうがいいか、協力し合うほうがいいか
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