闘病3年、享年38歳の彼女が完治信じて紡いだ言葉 末期がんにより35歳で余命1年宣告、夫が記録守る

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夫に引き継がれて存続する「みづきの末期直腸がん(大腸がん)からの復活の記録」(筆者撮影)
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故人が残したブログやSNSページ。生前に残された最後の投稿に遺族や知人、ファンが“墓参り”して何年も追悼する。なかには数万件のコメントが書き込まれている例もある。ただ、残された側からすると、故人のサイトは戸惑いの対象になることもある。
故人のサイトとどう向き合うのが正解なのか? 簡単には答えが出せない問題だが、先人の事例から何かをつかむことはできるだろう。具体的な事例を紹介しながら追っていく連載の第19回。

夫によって完全移設された闘病ブログ

<とにかく私は自然療法に妄信的になってもいないし、現実から目をそらせているわけでもない。ちゃんと自分はもうすでに余命以上生きられているが着実にカウントダウンに向かっていることは分かっている。しかし同時に根治できるとも思っている。というか、思わないと治らないのでそう思うようにがんばっているというのが正確なところかもしれない。特にここ最近はいろいろ身体の不調も出てきているので、私もマイナスの考えをがんばって振り払おうとはするが、正直「やっぱりもうだめかな・・・」という思いが何度も頭をよぎるのである。>
(2007年8月15日「私は末期がん患者。そして私が目指しているのは延命ではない。完治である。」)

「みづきの末期直腸がん(大腸がん)からの復活の記録」(https://mizuki.us/)というブログがある。夫婦でIT企業を運営していたみづきさんが、35歳でステージIVの直腸がんと診断されたのを機に始めたブログだ。

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余命1年との宣告を受けたうえで完治を目指して書きつづった記録は、開設した2006年4月からみづきさんが亡くなった2008年8月まで600回を超える。その後、全記事とコメントは利用しているブログサービス(http://kirin62.blog62.fc2.com/)が消失するリスクに備えて、夫のKさんが自ら管理するサーバーに完全移行している。

大切に管理されているみづきさんの記録を読み通すと、疼(とう)痛や便通などの身体的な苦痛とともに、あらゆる未来が閉ざされることを受け入れざるをえない心の痛みが伝わってくる。喜怒哀楽を包み隠さずに語る人柄ゆえににじみ出るすごみがある。

仕事盛りでこれからの景色を見つめているときに避けられない死が立ちふさがったら、どう立ち向かい、どう受容すればいいのか。人によって答えは違う。みづきさんの歩みをたどりたい。

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