闘病3年、享年38歳の彼女が完治信じて紡いだ言葉 末期がんにより35歳で余命1年宣告、夫が記録守る

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すでに主治医からは完治は難しい状況にあり、今後の治療は延命のためだと説明を受けている。それでもなお完治を目指すのであれば、西洋医学の外でも可能性を探らねばならないとみづきさんは考えた。

幸い夫や両親の協力の下、保険外治療を受けるという方法も選ぶことができた。抗がん剤治療を断念したあと、心理療法や食事療法、気功などを含む、いわゆる代替療法を貪欲に調べて試していく。すがりつくのではなく、完治という結果のために何でも利用するというスタンスだ。

便通の具合も具体的に表現し、日々感じた感謝も不満も包み隠さない。歯に衣着せないみづきさんのブログは、いつの間にかあまたの読者を集めるようになっていた。それだけに賛否の分かれる療法はコメント欄でもさまざまな意見を呼んだ。時に厳しいコメントにつらくなることもあったが、スパムや明らかな誹謗中傷の書き込み以外はすべて目を通し、思考の糧としていた様子が長文の日記に残されている。

完治を信じる自分を信じる

そこから見えてくるのは、完治という結果以上に、完治のための闘病をしたいというみづきさんの根幹の価値観だ。

<今は玄米菜食がいいと信じてやっているが、もしかしたら後日新しい説が出てきて、玄米菜食を完全に否定される日が来るかもしれない。そしたらそのときに玄米菜食を勧めた主人を私は恨むのであろうか?もちろんNOである。その時代に、その人のためにベストだと思ってやったことであれば、結果どうであれかまわないと思う。ただ結果が悪くならないようにするには、できる限りリサーチに時間を割き、多くの情報を持つことである。そして一度選んだからにはとことんそれを信じて実施することである。>
(2006年9月1日「食養生シリーズ①-ママが悪いのではないよ、だから気にしないで-」)

加えて、思考をめぐらして文章を書くこと自体が癒やしとなっていた節もある。療法に関する疑問を思索した4000文字を超える日記をつづったあと、こんな感想を添えたりもした。

<それにしても今日は久しぶりの大作を書き上げ、私の心は大満足(^^)。書いている間はすごく集中していたので痛みを感じることがなかったが、さあこれで書き終わったらどうなることやら・・・。かなり長時間座っていたので、そっちの疲れからも痛みが発生しそうだ・・・とほほ・・・。>
(2007年1月3日「病気にならない人に対する説明がない(本編)」)
長文投稿となった「病気にならない人に対する説明がない(本編)」

直腸にできた腫瘍やそれに伴う極度の便秘の痛みは薬で抑えきれるものではなく、闘病以来、痛みにより「通常1時間ごと、よくても2時間ごとに目が覚める」という状態が続いていた。その痛みは、ストーマ(人工肛門)を造設したあとも大きくは変わらなかった。強力な痛み止めが効いてブログの執筆に集中できている間だけはそれが忘れられる。

次ページ生存を喜ぶ日記をいっさい残していない
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