闘病3年、享年38歳の彼女が完治信じて紡いだ言葉 末期がんにより35歳で余命1年宣告、夫が記録守る

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人生の引き際を考えた先に見える景色が何もなかったことも、みづきさんを苦しめた。

<毎日痛みを取ることだけを目標に生きているだけのような気がしてきて、生きる目標を失いかけています。「頑張る必要がない」という言葉を皆から言われ、自分でも自分にそう言い聞かせて、でも最近その言葉に甘えすぎているような気がします。何も頑張らなくなって、ちょっとでもつらいと思うとやらなくなって、ベッドに寝ているだけの生活・・・。よってせっかく一時期つき始めた筋肉もまた落ちてしまい、歩くと言っても一日に300m、しかもほとんど歩いているとは言えないような歩き方で歩けるかどうかという状況です。どんどん全身状態は悪くなっていくばかり・・・。頭では分かっているのに身体が動けない・・・。いや、動かそうとしない自分がいる・・・。これがまた私をイライラさせるのです。>
(2008年5月18日「せっかくやめたステロイドを復活してしまいました」)

家族と一緒に葬儀のプランを立てる

頑張らない先の生き方が想像できない。いっそ「このまま楽になりたい」との思いは何度も脳裏をよぎったが、思考が機能し続ける限りどこかで復活の道筋を考える自分がいる。6月に脳転移が見つかっても、そこは変わらなかった。

<結果を聞いての私の気持ちは、まさか脳に転移すると思っていなかったのでショックでしたが、かえって諦めが付いたという感じで気が楽な部分もあります。ただ、気が楽な部分もある反面、もう諦めたら最後、完全復活は100%無くなってしまうと思うと、まだ諦めてはいけないと思う部分もあり、まだ現時点では複雑な気持ちです。>
(2008年6月21日「MRIの結果報告および今後の治療について」)

しかし、次第に死を受け入れるようになってきたのも確かだ。このとき、Kさんは医師から余命数週間と知らされており、すでにみづきさんと情報を共有している。家族で葬儀のプランについて話し合うようになったのもこの頃だ。

6月下旬に意識不明から回復すると、死を受け入れる比重はさらに大きくなる。

<あんなに薬嫌いだった私が処方されるまま薬を使って何とかしようとしているにもかかわらず痛みが解消されません。
少しずつ身体の回復が見える喜びがある一方で、恨めしく思う気持もあったりします。
なぜなら先日意識を失ったとき、あまりにも楽に死に近づけたからです。
さすがにあんなに簡単に楽になれることを経験してしまうと、辛いときにどうしてもそれを望んでしまいます。>
(2008年7月6日「正直疲れ気味です」)

2008年8月23日の夕方、みづきさんは38年と5カ月の生涯を終えた。

Kさんによる訃報投稿
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