中東・北アフリカ革命は連鎖するか--安易に“ドミノ”と騒ぐべきではない・その2《田村耕太郎のマルチ・アングル・ビジョン》

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前回指摘したように、いかなる主権国家もそう簡単に転覆しない。国家財政も、いわゆる“暴力装置”も保有している機関である。しかも、チュニジアやエジプトの失敗から素早く学び、危機感からいち早く財政出動や政治改革を行い始めた。

圧倒的な豊かさ

今回はなぜ湾岸大産油国に政権転覆運動が広がらないか指摘してみる。湾岸諸国の経済構造、政治体制、ネット検閲体制を少し詳しく見てみれば、そう簡単に政権転覆運動が広がらないことは理解されると思う。

湾岸産油国のトップ4、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、クウェートの4カ国を見てみる。これらの国々だけで日本の原油輸入の8割を占める。ここが揺るがなければ日本も世界も揺るがない。

まず圧倒的に豊かさが違う。サウジの1人当たりGDPは1.7万ドル(2010年IMF、以下同)。UAEは4.7万ドル、クウェートは3.3万ドル、カタールに至っては7.4万ドル。これら3カ国の豊かさは日本の4.2万ドルと並ぶか大きく凌駕し、世界トップクラスだ。4159ドルのチュニジアや2771ドルのエジプトとは文字どおりケタ違いである。

カタールの失業率は0.5%、クウェートの失業率は1%台、UAEも3%台である(CIA world fact book)。外国労働者に失業を押し付けているからだ。労働力の調整弁として外国人労働者を使い、景気低迷となれば、外国人労働者を追い出して失業を輸出し、国内雇用を守れるのだ。貧困層のいない、カタール、クウェート、UAEで転覆を目指して国家に行動を起こそうという若者がいそうな気配はない。

この中で人口2500万人と最大のサウジだけが失業率10%程度となっている。しかも、若年失業率は北アフリカ諸国並みに20%を超えているようだ。しかし、これはエジプトやチュニジアとは事情が違う。数々の若者優遇措置とその親族の豊かさが若者の労働意欲を奪っているのだ。

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