中東・北アフリカ革命は連鎖するか--安易に“ドミノ”と騒ぐべきではない・その2《田村耕太郎のマルチ・アングル・ビジョン》


 優遇策を見てみると、大学や職業訓練校が無料で、そのうえ通うだけで手当も出る。住宅も医療も無償で提供される。失業率が高いといっても政府に不満を持つ若者は少なそうだ。政府に抗議行動を起こそうかというほど能動的な若者も限られているだろう。

サウジでのデモの参加者は外国人労働者ばかりだった。

加えて、サウジのアブドラ国王は、潤沢な石油収入から3兆円程ほど支出し、さらに若者への失業手当、賃上げ、学業支援を充実させることを発表。

強固な政治・ネット検閲体制

この4カ国ともすべて歴史的な君主制で、議会は存在するが政党は存在しない。そもそも反政府運動の受け皿となる野党勢力がないのだ。反政府運動の母体となる市民組織もない。共和制の名の下、実質上、1つの大統領一族が富も権力も独裁し、格差を拡大させてきたチュニジアやエジプトとも違う。長年の歴史的背景から国民が正当性を認めてきた王族や首長が、潤沢な石油収入を元に全国民に豊かさを行き渡らせている。

百万人単位の人口の、カタール、UAE、クウェートでも国内単一のプロバイダを通じて、政治的に問題あるサイト等は強制的に検閲されブロックされる。人員・予算とも中国に次ぐサウジの検閲体制は、問題のあるサイトをブロックするだけでなく、早期に危険人物を特定し追跡する能力も持つ。

北アフリカでの革命騒ぎで、金融市場や企業業績の見通しに、地政学の導入が不可欠であることが世界的に認識されつつある。そうであるなら、ドミノ倒しを騒ぐ前に各国の経済・社会体制を細かく見ていくことが重要である。

繰り返しとなるが、今年の地政学上の最大の危機は、日本の足元にある。北朝鮮である。北朝鮮が動き始めた。さらなる核実験の準備や米韓合同軍事演習に対する強烈な敵対姿勢の誇示を開始した。北朝鮮は厳冬で食糧生産にも支障が出そうだ。中東情勢以上に、朝鮮半島を注視すべきだ。

たむら・こうたろう
米イェール大学マクミラン国際関係研究センターシニアフェロー。前参議院議員(民主党)

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