この結果、山田さんは特別研究員という身分と研究費、そして毎月20万円の研究奨励金を得られるようになったが、彼女によると、これは相当に狭き門なのだという。
「DC1を取るためには修士課程の1年冬までに相当な研究成果を積み上げなくてはいけません。申請がその時期なので。私にとっては大変なポイントでした。学部生時代からひとつの研究を続けてきた人と、大学院に入って半年の私では、大きな差が生まれているのも当然ですよね」
アカデミズムの世界に詳しくない人にしてみれば、月に20万円を貰えるとはいえ、そんなに重要なのか正直よくわからないかもしれないが、しかし、DC1に採用されるか否かでは、その後の研究生活には大きな差が出てくるのだという。
「DC1に採用されるのは限られた人だけで、もはや『研究者として成功するかしないかが決まってしまう』ような代物です。
というのも、DC1に採用されれば、研究奨励金のほかに、毎年最大で150万円の研究費が貰えるからです。研究にはお金がかかります。たとえば、海外の学会に参加したくても、3泊5日でヨーロッパに行くのに宿泊・交通費だけでも50万円はかかる。でも、参加しないと業績は積めない……そういう意味でも、DC1の存在は非常に大事なものなのです」
大学時代、交通事故に遭っていて…?
さて、こうして安定した研究生活を送れるようになった山田さんだったが、他方で、学部生の時に貯めた450万円とは別に、1200万円の貯金が大学院入学時にはあったという。
「大学4年生の時に、顔に傷が残るほどの事故に遭ってしまったんです。その日、私はバイクに乗っていたのですが、右折してきた車に思いっきり撥ねられたんですね。救急隊員の方に名前を確認されたのまで覚えているのですが、目が覚めると病院のベッドの上でした。体中、傷だらけでした。
幸いにも大きな後遺症はなかったのですが、顔にできた傷に対して、1200万円もの保険金がおりたんです。後遺症にはランク付けした等級表というものがあるのですが、『片目喪失』レベルのランクがついたんですよ。さらに、『女性で、未婚で、大学4年生だけど稼いでいる』という要素も影響したようで……」
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