つまり、奨学金を借りなくても、大学院生活を送れるぐらいのお金をゲットしていた……ということになりそうだが、「打ちどころが悪ければ亡くなっていたそうです」とのことなので、ラッキーとは言い難いだろう。なお、彼女によると「『これは神様が私にくれたお金だ』と思ったので、自分には使わなかったんです」とのことで、ストイックさがよくわかる。
そんな事故もありつつ、5年間の院生生活ののち、大学院を無事に修了。首席になったことで第一種は返済免除となり、第二種も修了と同時に一括返済したという。
「当時は『首席になった』ことよりも、『首席になったことで、奨学金が全額免除確実になった』喜びのほうが大きかったですよね。だって、200万円以上の学費と入学金がチャラになったということですから」
教員として、今の学生に思うこと
祖父が病気になってから10年以上が経った今、山田さんは20歳のときに目標としたように最先端の技術を教える大学で教鞭をとっている。奨学金を借りて大学院に進んだことで、今のポジションはあるわけだが、大学院選びと奨学金を借りることについては、しっかり検討したほうがいいと、自身の教え子たちには伝えているという。
「今の時代、お金で苦労している学生が本当に多いです。でも、バイトのせいで単位を落として留年してしまっては意味がないですし、だからといって、奨学金をたくさん借りて借金漬けで社会に出るのも大変でしょう。
だからこそ、教え子が大学院に行きたいと言った時は、お金のことをしっかり考えるように言いますし、経済状況によっては国立の大学院を目指すように伝えますし、進学後も学生の本分である勉強を頑張ってほしいと話します。そこで結果を出せば、第一種奨学金は返済免除になる可能性があります。日本学生支援機構も説明しているとおりで、芸術やスポーツやボランティアでも対象となりますからね。
そういうことをあまり考えないまま、なんとなく大学を選んで、なんとなく奨学金を借りて、なんとなく大学に通っていると、将来の返済が不安になって、学業に打ち込むべき期間にバイトに勤しんでしまうんです。バイトもいい社会人経験が得られるとは思いますが、ほどほどにして、『何のためにバイトをしているのか』を見失わないでほしいと切に思います。貴重な学生時代は短いですから。
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