「奨学金550万円」女性が迷いなく満額借りた理由 夢を追う為とった「借りられるだけ借りる」戦略

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まさに下克上受験だが、大学院進学に向けては勉強だけではなく、生活費も稼がなくてはならない。当時、山田さんは宅急便の配送、パチンコ、塾講師のアルバイトを掛け持ちしていた。

「大学の実験が終わり次第急いで帰宅し、30分以内に夕飯を食べてシャワーを浴びて、次の日の授業の荷物を持って、宅配便の夜勤に行きます。そこで24時から6時まで働いたらそのまま学校に直行し、教室で寝ていました。家に帰ったら絶対寝てしまうけど、大学の教室なら9時頃から講義が始まるので、自然と起きられるんですよ。そして、そのまま寝ぼけ眼で講義を受けていました。こういうサイクルの日が週に2回あって、あとはパチンコが週2回に塾講師が週2回。

大学3年生になると院試対策のために塾に通う必要もあるので、アルバイトは塾講師1本に絞りました。当時はもう親の扶養は気にしてなくて、長期休暇の講習などで月50万円近く稼いだこともありました。その代わり、8時半から23時まで授業はパンパンです」

勉強とアルバイト漬けの毎日を送っていた山田さんは、その努力の甲斐もあって、4年生の夏に東京大学の大学院に合格。通っていた私立大学では例を見ない快挙であった。

「前代未聞の学歴ロンダリングですよね(笑)」と笑い混じりで話す山田さんだが、大学院入学のタイミングで奨学金を、日本学生支援機構から借りることになる。

「第一種(無利子)を月額8万8000円、第二種(有利子)を12万円借りました。どちらも修士課程における満額です。また、入学時特別増額貸与奨学金の50万円も借りて、合計で約550万円です。奨学金は金利が安いので、借りられるのであれば満額で全部借りてしまおうと思っていたんですね。

もしそれが借り過ぎだったとしても、返済が発生するのは社会人になってからですし、『なるだけ無駄遣いせず、返済開始が始まる前に返せるだけ返せれば利子はつかない。利子がついてもいいなら使うことにしよう。持ってて損はない。心の安心を取ろう』そう思っていました」

額面だけ受け取れば、働かずとも毎月20万円近く振り込まれるため、将来にツケを回して奨学金で優雅に生活できそうだが、山田さんは極めてストイックな日々を送った。

「修士の2年間は、学部時代に貯めた450万円を切り崩していく生活でした。留年しては元も子もないので、大学院では勉学に専念することに決めていたんです。ロンダリングしたこともあって勉強についていけるかプレッシャーもありましたし、母校の期待を裏切れない……という変なプライドもあったと思います。

月に20万円の奨学金の半分は学費用に貯金したかったので、その残りで生活しなければいけません。当時住んでいたのは築50年以上の木造アパートで家賃は4万9000円。幸いにもお米は祖父母が送ってくれていたのですが、食事はもやしとキャベツの毎日、あとは見切り品のオンパレードでした」

「相当に狭き門」なDC1に採用

絵に描いたような苦学生生活を送った山田さんだが、修士課程を終える頃には博士課程学生向けの日本学術振興会(通称、学振)のDC1に採用。いわゆる特別研究員制度である。

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