奨学金576万円を借り、バイクローンに手を出し、バイトはしない…名門大学に進んだ男性が語る「僕が多重債務者になるまで」

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男性の後ろ姿
小学生の頃から勉強ができた彼は、漠然と「大学には行くものだ」と思っていた(写真:Graphs/PIXTA)※写真はイメージです
これまでの奨学金に関する報道は、極端に悲劇的な事例が取り上げられがちだった。
たしかに返済を苦にして破産に至る人もいるが、お金という意味で言えば、「授業料の値上がり」「親側におしよせる、可処分所得の減少」「上がらない給料」など、ほかにもさまざまな要素が絡まっており、制度の是非を単体で論ずるのはなかなか難しい。また、「借りない」ことがつねに最適解とは言えず、奨学金によって人生を好転させた人も少なからず存在している。
そこで、本連載では「奨学金を借りたことで、価値観や生き方に起きた変化」という観点で、幅広い当事者に取材。さまざまなライフストーリーを通じ、高校生たちが今後の人生の参考にできるような、リアルな事例を積み重ねていく。

​​「勉強ができるから」という理由でイジメの対象に

「大学に行けば何かが変わると思ったんです」

九州出身の関根健斗さん(仮名・33歳)は、2人兄弟の長男。生まれ故郷で大学進学は主な選択肢ではなかったが、小学生の頃から勉強ができた彼は、漠然と「大学には行くものだ」と思っていた。

「父は個人事業主。母はスーパーのレジ打ち、電話オペレーター、パン屋など、パートで家計を助けていました。両親共に大卒ですが、父は大学進学を望んでいたわけではなく、子どもの頃から自衛隊への入隊を勧めてきました」

しかし、自身を「エヴァンゲリオン体型」と自虐する関根さんは身長こそ高かったが、食べても食べても太らず、自衛隊や消防士など、身体を資本とする仕事には就けないと感じていた。だからといって、何か夢があるわけでもない。

中学校に入り、周囲がグレだすと、「勉強ができるから」という理由で、別の小学校出身の同級生たちからイジメの対象となり、部活も辞めざるを得なかった。

いわゆる「平成一桁生まれ」の関根さんの時代でも、「勉強する奴はダサい。不良のほうがカッコいい」という価値観が根付いていたそうだ。

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