「ただ、ここでもバイクローンやカードを何度か焦がしたせいか、30万円程度しか借りられませんでした。もう、いよいよダメだなと悟って、社内の人間関係や転職を諦め、ろうきん(労働金庫)で借り換えることにしました。その結果、現在の毎月の返済は奨学金とろうきんのみで、なんとか回せそうです。奨学金は利子がつくので、いずれ繰り上げ返済をしたいと思っています」
「40歳を超えても返済は終わらない……」と嘆く関根さんだが、年齢を重ね、年収が上がるごとに気持ちにも余裕が生まれ、最近では浪費癖もなくなった。今では愛車を手放し、結婚を前提に交際している恋人もできた。若かりし日の行動は堅実とは言い難く、決して褒められたものではないが(とくに、奨学金は学費や生活費に使わないといけない)、それでも地元に残っては得られない人生を手にしたのも間違いない。
弟も奨学金で人生を切り開く
そんな半生を振り返りながら、関根さんは「奨学金という存在を知ったこと」が人生のターニングポイントだったと語る。
「地元には、下のきょうだいの進学を考えて夢を諦めた友達がたくさんいました。根底には経済的な余裕のなさがあるんです。でも、奨学金という選択肢を知ることで、『どうにでもなる』とわかるようになりました。
僕だけでなく、弟も高専を経て旧帝大の大学3年に編入し、奨学金を借りて大学院に進学。今では大手重工業で研究員として働いています。母が奨学金という制度を教えてくれたおかげで、僕たち兄弟は自分の道を切り開けました。だからこそ、奨学金の“負”の側面だけでなく、“正”の面も広く知られてほしいと思います」
そのため、結婚して子どもが生まれたら、将来「奨学金という選択肢がある」と伝えてあげたいという。
「僕より彼女の方が稼いでいて、すでに貯金もあるそうなので、完全にそれ頼みですが……。それでも、せめて奨学金を借りずに国公立に通える程度の学費は用意してあげたいですね。もし、どうしても私立に行きたいと言ってきたら、足りない分は勉強をがんばって第一種奨学金の範囲内で借りてほしい。遊ぶお金はバイトで毎月コツコツ稼いで、自分で確保してほしいですね(笑)」
日本学生支援機構(JASSO)の奨学金貸付残高が約9兆5000億円に達していることからもわかるように、日本の奨学金制度は、すでに破綻していると言っても過言ではない。
それでも、大学生の2人にひとりが利用しているように、大学に進学して将来を切り開くためには欠かせない制度である。つまり、奨学金制度を批判するのであれば、借りた本人を責めるのではなく、「大卒」が重視される社会構造などに目を向けるべきだろう。
関根さんはやや特殊なパターンかもしれないが、「負の側面」ばかりを見るのではなく、この制度によって「救われた」人たちの存在も、忘れてはならないのだ。
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