もともと私は吉本興業に入ったほうがいいようなおやじギャグが大好きな人間なので、ジョークを使って自分という人間を覚えてもらうようにしていました。もちろん、会議の席では言えませんので、ディナーなどお酒が入った場面でジョークを持ち出します。内容は、日本に引っかけたものばかり。日本を根拠地に仕事をしている以上、日本をサポートしてもらうためにはやはり日本を印象づける必要がありますからね。
--『村上式シンプル仕事術』(ダイヤモンド社)には、「ビジネスパーソンは、マンキューを読まなければダメ」と書かれています。
実を言うと、サミュエルソンが書いた経済学の本で挫折しているんです。電話帳のようなボリュームがあるので、一カ月くらい休暇をもらわないと読めません。
一方、マンキューはわかりやすい。『マンキュー経済学1 第2版 ミクロ編』と『マンキュー経済学2第2版 マクロ編』の翻訳版(東洋経済新報社)は、一気呵成に読めちゃうんです。
ただし、内容を全部理解して頭に入れる必要なんてありません。マンキューを理解できたら経済学者になれますよ。“経済学が文系学問の中では唯一自然科学的な根拠を持って成立しているのだ”ということが感じられればいいんです。この混沌とした複雑怪奇な社会に、経済学が部分的であれ妥当するケースがあるんだということが認識できれば、巷の怪しい経済話の嘘は見抜けるようになります。
耳当たりのいい話は全部嘘ですよ。ワイドショーに出ている経済学者や経済評論家でも、「お前マンキュー程度すら読んでないだろ!」と言いたくなるような人はゴロゴロいます。
--村上さんの著書2冊からは、わかろうとわかるまいと一気呵成にやるんだという気合いのようなものが感じられます。人間がチャンスを広げられるかどうかの分かれ目は、この集中力にあるような気がします。
この2冊はある種自叙伝といってもいいでしょう。特に「仕事術」は時系列順に勉強した内容が書かれています。田舎の秀才が、九州の進学校から京都大学へ入り、日立電子、日本DEC、数社のトップマネジメントへとはい上がってきたプロセスでもあるんです。