後発薬大手「日医工」、再建への険しすぎる道のり 事業再生ADR申請で大きなヤマ場を迎えている
だが、現在の拡大路線を築いてきた、就任して22年になる田村友一社長は創業家出身で、現時点で会社側は社長交代について否定している。また、仮にリストラ対象が不採算品だった場合、日医工が作っていた薬を他社が大量に引き受けることができない限り、その薬を服用していた患者に多大な影響が及ぶことになる。
ある競合メーカーの社員は「日医工は利益度外視で利幅が小さい商品を作っていた。それを積極的に引き受けるのは難しい」と話す。別のメーカー社員からは、「毎年薬価が引き下げられ、利益が圧迫される制度自体が変わらない限り、日医工の尻ぬぐいはできない」という声も上がる。
足元で続く後発薬不足
経済産業省によると、2021年3月までに86件の事業再生ADRの申請があり、債権者全員の合意を得たのは60件だった。事業再生ADRが成立しなかった場合は、法的整理に移行する。その場合、医療機関など、金融機関以外の取引先との間にも影響が生じ、イメージの毀損度も大きくなる。
足元ではいまだ、後発薬不足に改善の兆しが見えない。トップメーカーだった日医工の供給が滞っていることを受け、他メーカーに切り替えようとする医療機関が増加。その結果、後発薬自体が不足し、先発薬でまかなおうとする動きもある。
メーカーは不足する薬について、可能な限り既存の患者への影響を優先し、新規患者への提供を制限している。そのため、一部の患者にとっては、薬の選択肢が狭まるほか、先発薬への切り替えによって費用の負担が増える状況が続いている。
日医工は、富山第一工場の正常化を2023年秋以降とみる。その間の不足分を、他社で補えるかというとそうではない。2021年度、日医工を抜いて後発薬の数量シェアでトップとなったサワイグループホールディングスの末吉一彦社長は、5月12日に行われた決算会見で、需要が供給を上回る状況が続いているとし、「医療機関からの要請にすべて応えることは難しい」と話した。
数量シェア2位の東和薬品の吉田逸郎社長を含め、業界関係者らは皆「日医工にいちはやく再建してもらうことを望む」と口をそろえる。社会的影響が大きいだけに、法的整理は避けたい事態だが、金融機関の同意が得られるかは不透明である。
国民の医療費削減に貢献することを目的に、多くの後発薬を手がけてきたはずの日医工。多くの人々の生活を支えてきた後発品メーカー大手が経営破綻となると、その影響は計り知れない。それだけに日医工が提示する再建案が持つ意味は小さくない。
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