後発薬大手「日医工」、再建への険しすぎる道のり 事業再生ADR申請で大きなヤマ場を迎えている
出荷停止の影響がここまで大きくなった背景には、日医工ならではの事情がある。ある同業関係者は「日医工はシェア拡大が第一目的で、不採算品目を多く抱えていた」と語る。
日医工ではピーク時に、24時間に近いレベルで工場を稼働させ、数量を稼いでいた。一方で外注比率も高く、業界の中でも日医工の原価率はとくに高かった。2021年度の国内事業の原価率は、同業のサワイが64.8%、東和薬品が54.7%だったのに対し、日医工では100.5%(前期は88%)に上っていた。
さらに「薬価改定」が強い逆風となった。2021年以降は基本的に毎年薬価が下がるようになり、発売して時間が経つほど、利幅は小さくなる。そのため毎年、特許が切れてから間もない薬の後発品を売ることが、採算改善につながる。
だが、「(2021年春の業務停止によって)医療機関が日医工の商品を避けた結果、新規採用品での日医工のシェアが下がった」(業界関係者)。採用から年次が経過した不採算品の構成が高くなったことで、採算悪化につながった面もあるようだ。
カギを握る「事業再生計画」
こうした流れを受け、事業再生ADRを申請した日医工だが、これで安堵することはできない。
事業再生ADRでは債権者全員の合意がなければ成立せず、ハードルは低くない。2022年3月末時点で日医工は、三井住友銀行から428億円、日本政策投資銀行から224億円、農林中央金庫から203億円を借り入れている。
債権者集会について、日医工は「合意があったときのみ開示する」というスタンスであり、内容や日程はわからない。だが、「重要なのは2回目の債権者集会で、金融機関が納得する事業再生計画を提示できるかどうか」(帝国データバンク東京支社情報統括部の内藤修氏)だ。
金融機関に支援を求める場合、原則としては役員の退任などで経営者責任を果たすことに加え、不採算の後発薬の取り扱い削減など、身を切り納得してもらうことが必要になる。
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