25歳陰キャ青年が「孤独研究」で37万人登録の訳 ASDゆえ到達できた「自分を変えない」生存戦略

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その後、転職活動を経て、田中氏は現在も仕事で関わる会社に入社。社内でも撮影するようになり、飲み会で馴染めずにいる自身の様子を動画にしたり、孤独なデスク飯のルーティン動画をアップしていく。(なお、初めは無断で社内の撮影を行っていたが、現在は「問題のない形にしている」とのこと)

会社の飲み会に参加するも、会話には参加できていない様子(画像はコスメティック田中YouTubeより)

1社目の時は「見られたら恥ずかしい」気持ちがあったのに、2社目だとその気持ちはなかったのか……と疑問に感じる人も多そうだが、コミュニケーションが不得手な人特有の感覚があったようだ。

「だんだんコミュ障とバレていくより、最初にコミュ障とわかってもらえているほうが自分としては嬉しいんです。たとえば飲み会だと、自分が参加者のひとりだとやりづらいけど、主催者なら自分にはまだやりやすい。それって、主催者にはロール(役割)のようなものがあって、そこをきちんとやれば乗り切れるからなんですね。だからこそ、最初にコミュ障だと打ち明けてしまうことにしたんです」

激辛ペヤングを食べるも、周囲と共有できない様子(画像はコスメティック田中YouTubeより)

1か0か思考は今も続いている様子だが、ただこの気付きは、彼にとって大きかったようだ。

「学生時代はコミュニティの中でのコミュニケーションがすべてだと思ってたけど、オープンな社会に出ると、そこにはロールみたいなものがあることに気付きいた。その結果、『自分はダメだ』と思いこんでいたことに気付けたんです」

孤独を語り、視聴者の共感集める

その後、程なくしてチャンネルは若者を中心にヒット。「時期的にマッチしたんだと思います。コロナ禍で寂しさを感じてる人が多いなか、共感がわきそうなエピソードを語っていたので」と、運の要素も大きかったと本人は謙遜するが、一方で視聴者の胸には深く届いている様子。田中氏自身が孤独だった過去をさらけ出しているせいか、視聴者からは真面目な人生相談が数多く寄せられるという。

「『クラスに馴染めなくてつらい』といった話から、陰キャの粋を飛び越えて『人生がつらい』という話も寄せられます。でも、親が片親で自分でも働かないといけないとか、虐待を受けているとか、家庭環境的な貧しさについての悩みであっても、不思議と『陰な学校生活』との相関性が強いと感じていますね」

もちろん、孤独の当事者だったとは言え、解決策はケースバイケースだ。ゆえに田中氏自身も「自分がアドバイスできるものではないし、『社会人になってある程度自立するまでは耐えてください、的なことしか言えないですよね」とのことだが、社会人として社会生活を営むなかで思うのは、「孤独は最強の筋トレだった」ということだという。

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