「新しい資本主義」より「新しい経済政策」が重要だ 21世紀の経済構造にふさわしい経済政策とは?

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さて、この結果として、物価、株価などの資産価格、さらに為替水準、これらに対して、金融政策ではどのような方針を具体的に取るべきか。

なぜ物価や為替の安定が極めて重要なのか

インフレが加速すると、スパイラルで景気も悪くなり、投資も阻害され経済成長が失われる。が、同時に高い物価水準自体も(インフレが加速しなくても)、とりわけ低所得者層を経済的に苦めることになるから、物価は抑制する必要がある。

この場合、金融政策は、現代においては、実体経済以上に直接資産市場に影響を及ぼし、しかもその程度が著しいから、物価以上にリスク資産価格に対して攪乱をもたらさないような金融政策が必要になる。つまり、景気刺激が必要な場合には金融緩和を行うが、インフレになったら、それができなくなるように、金融緩和によりリスク資産市場が過熱したら、即座に金融緩和を抑制しなければならない。物価にも目配りするが、それ以上に資産市場の安定、健全性を優先することになる。

さらに、為替レートは、国民の生活水準に直接影響を与えるから、安定が何よりも求められる。通貨安政策は自国経済と自国民が貧しくなる国民窮乏化政策となるから、決して採用してはならないことになる。物価も為替レートも、安定していることが将来への不透明性を減少させる。安定によって投資を促し、経済成長を促進することになるから、長期の為替レート、実体経済によって決まる為替レート、PPP(購買力平価)および、経常収支による為替レートの自然な決定を促すために、金融市場の都合で為替レートが動かないようにする。

すなわち、現在の円安をもたらしているような、日米金利差よるドル高円安、あるいは世界で日本だけが長期金利がゼロ付近であることによるによる全面的な円安は、日本経済にとって大きなマイナスであることを強く認識すべきだ(中国元に対する円安は、不動産や企業や技術、優秀な人材をすべて中国に奪われることになっているように)。

したがって、最近は上昇中だが、インフレ率が1%程度で安定していることは、大変素晴らしいことだ。デフレスパイラルになるならともかく、1%で安定していることは、さまざまな副作用を甘受して2%を目指すよりも、すべての意味で望ましい。ここからさらに2%を目指して、いつ実現するかどうかわからない、というのは、もっとも不透明性が高く、日本の実体経済も株式市場も予測不可能で、実物投資も株式投資もしにくい状況になるので最悪だ、という認識を持つことが重要である。

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