「新しい資本主義」より「新しい経済政策」が重要だ 21世紀の経済構造にふさわしい経済政策とは?

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21世紀においては、金利は常に低いから、さらなる金融緩和でわずかに金利を低下させても、有効な投資は生まれない。金利の低下は、実物投資ではなく金融投資だけを膨らませる。

つまり、投資用不動産、株式投資、個人にとっては投資用住宅および自宅への投資であり、いずれも生産力の向上にはつながらず、現在の景気は刺激するが、長期の経済成長にはまったくつながらない。それどころか、実際には、実物投資を減少させ、長期の成長力を低下させる。

過大な財政出動と金融緩和で将来の経済は悲惨に

なぜなら、利子というのは、現在と将来との交換の価格である。金利が低いということは、将来の価値が低いということである。つまり、貯蓄から消費へ向かうのであり、現在の消費過剰になり、現在の景気は過熱し(実力以上になり)、将来、消費したくても金(カネ)がないから、将来の景気は悪くなる。

なにより、投資に回るリソースは、現在、消費しなかった分、貯蓄した分であり、貯蓄額と投資額はマクロ経済学で習うように、経済全体では一致するのであり、投資は必ず減るのである。要は、アリとキリギリスであり、将来は、消費する金もないし、投資もしていないから経済全体の成長も起きていないのである。だから、将来は、二重の意味で貧しくなる。

このように、財政出動と金融緩和を過大に行うと、将来の経済は悲惨になる。経済成長が実現しないだけでなく、将来、消費する金もリソースもなく、将来の人々は現在よりはるかに貧しくなる。

ちなみに「財政出動を抑制しろ」という原則は、財政健全化とまったく無関係である。借金の残高は関係なく、毎年の財政支出が大きければ大きいほど、経済は縮んでいくのである。

財政黒字だろうが赤字だろうか関係ない。実は、日本が21世紀に入って経済成長が他の国に比べて見劣りする主要な理由なのである。大規模な財政出動をして、大規模な金融緩和をすれば、目先、その年のGDPはわずかに増えるが、将来への成長力が奪われ、潜在成長率がみるみる低下してしまったのである。

いまさらのように、メディアもエコノミストも騒ぎ出しているが、実は、日本企業は人を大切にする、投資を優先する、というのは20世紀までの幻想だ。

今、彼らは「人的投資もソフトへの投資(無形資産への投資)も、他の成熟国に比べて極端に少なくて、成長力が低下している」と言い出している。だが、それは彼らが「景気が腰折れる」と騒ぎ続けて、1998年の金融危機から脱却しても、常に財政出動と金融緩和と求めてきたのに対して、政府が彼らの批判(というアドバイス?脅迫?)に従ってしまったからである。

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