東京都心の外堀通りから溜池交差点を左に折れて、六本木方面に向かおうとしたところで、タクシーは大渋滞に巻き込まれてしまった。アメリカ合衆国大統領閣下が訪日中で、同国大使館周辺は全国各地から動員された警官たちで溢れている。要人の訪日中にありがちな光景であった。
バイデン大統領&岸田首相は「癒し系のペア」
ちょうど3年前に、ドナルド・トランプ大統領(当時)が「令和初の国賓」として訪れたときに比べると、今回の訪日はいかにも地味目である。あのときの日程は5月25日から28日で、日本外交はよくこの時期に「絶対に失敗できないお客さん」をお招きする。大相撲春場所の千秋楽から日本ダービーにかけてのこの時期は、この国のもっともよい季節と言えるだろう。
3年前は、「安倍晋三&ドナルド・トランプ」という派手好きコンビが、茂原カントリー倶楽部でゴルフをプレイし、両国国技館で大相撲を見物し、夜は六本木で炉端焼きと心ゆくまで「外遊」をエンジョイしていた。
今回の「岸田文雄&ジョー・バイデン」は、それに比べると癒し系のペアである。まして世間はコロナ禍が終わったわけではなく、ウクライナでは戦争も起きている。ということで日米首脳会談は迎賓館で、晩餐会は八芳園で、翌日のクアッドこと日米豪印首脳会合は首相官邸でと色気がない、いや、実務的なお膳立てとなった。
バイデン大統領は、しみじみ「省エネモード」に見えた。日米首脳会談の間はともかく、新たに立ち上げたIPEF(インド太平洋経済枠組み)のキックオフ会合で、各国代表がリモートで抱負を述べている間など、いかにもお疲れ気味の様子であった。
「いやー、13カ国も参加してくれるなんて、こんなにうまくいくとは思わなかったよ。キシダくん、後は任せるからよろしくね」と言っているように見えたのは気のせいだろうか。
今回の訪日では、バイデン大統領は「来年のG7首脳会談の広島市開催を支持」「(安保理改革が実現した場合の)日本の常任理事国入りを支持」「日本の防衛力強化決意を評価」など、日本国内向けのリップサービスは盛りだくさんであった。
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