とはいえ、外国メディアのヘッドラインを飾ったのは、日米首脳による共同記者会見で飛び出した「台湾へのコミットメント発言」であった。ここはひとつ、ホワイトハウスの「ブリーフィングルーム」に掲載されている記者とのやり取りを確認してみよう 。
当初は原則論を語ったバイデン大統領だったが……
最後に質問に立ったアメリカ人記者が、「中国が台湾に侵攻した場合、日本はどうするのか?」と問いかける。岸田首相は、「中台海峡問題の平和的解決が重要、という基本的立場は変わっていない」と答える。その上で「ウクライナのような武力による現状変更は、アジアにおいては認められない」「そのためにも日米同盟は重要であり、アメリカによる拡大抑止を信頼している」と述べている。
すこし敷衍させていただくと、日本は確かに「ひとつの中国」原則を認めている。ただしそれは、「同じ国の中では好き勝手にやっていい」ことまで認めたわけではない。「中台関係の解決は平和的」であるべきで、台湾に武力侵攻するなんてわれわれは認めませんぞ。1972年9月の日中国交正常化から半世紀、これが変わらぬ日本外交の立場なのである。当時の田中角栄首相と大平正芳外相は、まさにギリギリの交渉をやっていたのだ。
同じ質問に対し、バイデン大統領も「台湾に対する方針は変わっていない」と答える。そこから「ウクライナにおけるプーチンの蛮行」に対する非難の言葉がしばし続く。
そこから当初の質問に戻り、”But the United States is committed.”(しかしアメリカはコミットしています)。ひとつの中国原則を支持するけれども、それは中国が武力を使って台湾を乗っ取る正当性を持つことを意味しない。そして、「そんなことは起きないし、試されないというのが私の期待だ」と強い言い方をしている。
記者会見はこれで制限時間いっぱいであったところ、この記者は短く「さら問い」を行った。これが問題の発言を引き出すことになる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら