バイデン外交に対しては、すでにいろんな批判が飛び交っている。「ロシアに対して甘い態度を見せたから(ウラジーミル・)プーチン(大統領)になめられた」「アフガニスタン撤退の不手際で米軍への信頼を失墜させた」「ウクライナへの軍事介入には、もっと『含み』を持たせるべきではなかったか。いや、そもそもトランプ大統領であれば、こんな事態には至らなかったのではないか」、などなど。
流れに任せて勝利をたぐり寄せるバイデン大統領
ただし見方を変えれば、バイデン氏はできる範囲内で最善を尽くしている。まずアメリカのインテリジェンスは、ロシアの動きをほぼ完全に読み切っていた。開戦前のバイデン氏は、ロシアの手の内を惜しみなく明かしまくった。ロシアのプーチン大統領は、「まずい、こちらの機密が漏れている」と焦って、内部に対する説明を極力省いて軍事行動に打って出た。初期のロシア軍の混乱ぶりは、それが原因だったと解釈するのが自然だろう。
しかも、5月21日には、バイデン政権はウクライナに対する400億ドルの追加支援策を成立させている。400億ドル(約5.1兆円)と言えば、日本の年間の防衛予算に匹敵する。しかもこれは、3月に成立した136億ドルの支援予算を使い切った後の措置だ。さらにアメリカの財政年度は9月末に終わるから、秋には新年度予算も追加されるのではないか。
考えてみればアメリカは、ウクライナに武器や資金を援助するだけで、ロシアの軍事力を弱めることができる。この間にウクライナ軍はもちろん犠牲が出るだろうが、アメリカン・ボーイズ&ガールズをリスクにさらすわけではない。しかも使われる武器・弾薬はアメリカ製である。
バイデン氏はこれまでずっと、「戦わないことでトクをしてきた人」である。2020年の大統領選挙を思い出してみてほしい。民主党予備選も、トランプ大統領との決戦投票も、みずからは動かずにデラウェア州の自宅に引きこもっている間に、バーニー・サンダースは出馬を辞退したし、ドナルド・トランプは勝手に転んでくれたのだ。何か問題があったときは、正面から立ち向かうことをせず、流れに任せて勝利を手繰り寄せるタイプなのだ。
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