次に「新しい金融政策理論」については、今回だけでなく「日銀には『21世紀型の金融政策モデル』が必要だ」でも議論したように、金融緩和による需要刺激策は長期の成長にはマイナスである。そして、これは資産市場のバブルを生み出すだけだ。
現在の資産市場がバブルになれば、実物投資するよりも、バブルが続いている間は、金融資産投資をするほうが合理的になり、実際、金が殺到し、さらにバブルになる。これが、21世紀に繰り返し起きてきて、リーマンショックという帰結(リスクテイクバブルと私は呼んだが)となった。しかし、それに懲りずに今度は量的緩和バブルが世界的に起きて、現在崩壊しつつある。
そのツケは、資産市場の崩壊による実体経済へのダメージとなって返ってくる。そして、それが起きる前に(同時に)スタグフレーションが起きているのである。
なぜ新しい金融政策が必要なのか?
ここで再度、以前「日銀金融正常化への『8段階の行動計画』を示そう」でも議論したように、「金融正常化への政策理論」をまとめてみよう。要は、金融政策は、実体経済だけでなく金融市場、資産市場も直接の政策目的の対象とする。その結果、物価とともに資産価格もターゲットとなる。為替は、自国通貨という最大の資産を守るためにも重要な考慮の対象となる。
背景にある考え方は、価格を安定させることによって、経済主体の活動を妨げず、将来への不安やリスクを減らすことにより、健全な投資を行えるようにするという原則だ。
そのためには、実体経済の安定と同時に金融市場の安定を目標とすべきである。実体経済の価格つまり物価と、金融市場の価格つまりリスクプレミアムの安定をターゲットとするべきである。「バブルは崩壊して初めてわかる」というのは嘘なので、常にリスクプレミアムを高すぎることのないようにすると同時に、リスクプレミアムが低下しすぎることも抑制しなくてはいけない。バブルになると結局崩壊することになり、その後に、資産市場だけでなく実体経済にも大きなダメージを残し、長期的な実体経済の発展を阻害するからだ。
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