NHK「17才の帝国」に現実を重ねてハマる人の目線 才能の集結した青春SFエンタメは何が面白いのか

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才能の集結した青春SF エンターテインメントを6月4日(土)の最終回(第5回)放送前に第4回までを振り返っておこう。

第1回はドラマの世界観(設定)が一気に紹介される重要回。

ヒロインで高校生の茶川サチ(山田杏奈)は憧れの真木に請われ総理の補佐官としてウーアに家族で移住する。

「大人はみんな世の中のことより自分たちのことばっか考えてるでしょ」

「政治家の人たちだってそう。問題解決するどころか問題ばっか起こしてるんじゃん」

「高校生だって17才だって不安なんだよ 今が 未来が」

サチが父母(杉本哲太、西田尚美)に吐露する想いは17才のみならず現実の庶民の気持ちであり、共感できる。

変革と創造を目指して政策を考え始める真木がまず手掛けたのは大幅なリストラだ。AI が合理的に算出したところ、市議会議員たちまで議会不要とみなされ真木は廃止を決める。

若者を利用して無駄を省こうとしていた大人たちは想定外の展開に忌々しさを覚える。

AIも真木も余計な癒着やしがらみや根回しがない。ときには良いものとされる義理や人情もない。淡々と合理性のみ追求する。

不満を感じている庶民には胸のすく流れ

第1回の内容はいまの世の中に不満を感じている庶民には胸のすく流れでつかみとしては上々。大人だって自分たちよりもっと大人の世代を責めたいし、誰もがみんな政治家の仕事に不満を持っている。ふだん、政治家や正規社員がたいした働きもしないで暴利を貪り、割りを食うのは下々の者ばかり。余談だが、つい先日も国会中継で、所得税と消費税は最大の二重課税だと共産党の小池晃が岸田文雄首相に問い詰めていたっけ。

第2回は物語が動き出す。市議会廃止により市民の幸福度が上がると主張する真木に、前市長・保坂(田中泯)らが激しく反対する。リストラ案は政治家のみならず市民にも不評で、真木の支持率はぐっと下がる。

「救う政治」を訴える真木だが、そこに矛盾がある。誰をも救うと言いながら、大人たちを切り捨てているからだ。真木の理想を貫くとそれは独裁政治になる危険性があった。

真木は再開発予定の狸穴商店街を視察する。ここもまた人々と同じで、開発することで古いものを切り捨てることになる。真木は街を歩き、古いものと新しいものと海と山が共存した場所の尊さを体感し、そこに生きる人々と触れ合った再開発を白紙にしようと考えはじめる。

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