コカ・コーラBJHのカリン・ドラガン社長は今年2月、5月からの大型ペットボトルの値上げについて「(業界の)リーダーシップをとりたいという強い思いで決断した」と話していた。しかし、量販店やコンビニなど売り先に応じて値上げ実施の有無を分けるなど、異例の対応を取ったことを背景に、サントリー食品などの競合はしばらく値上げに追随しなかった。
コカ・コーラBJH以外のメーカーが値上げを行うのは10月。同社にとっては、2月の値上げ発表後すぐに他社も追随するとの目算が狂った形だ。飲料メーカーにとって最大の書き入れ時となる夏場は、唯一値上げを行っているコカ・コーラBJHが「一人負け」(市場関係者)となる可能性が否めない。
出荷最盛期に劣勢を強いられる局面において、再度の値上げを打ち出せば、さらなる競争力低下につながりかねない。値上げを先んじて実施したことで、取引先との交渉などの面で再値上げへの身動きが取りづらい事情もあるだろう。
逆に言えば、再度値上げを行わない限り、10月以降は他社と比べて値上げ幅の小さい同社が優位となる可能性が高い。ただ、原材料や物流費の高騰が足元でも続く中、2月発表の値上げ幅のままでは収益を確保するハードルが上がり、諸刃の剣でもある。
「権謀術数」の世界から脱せるか
コカ・コーラBJHは販売数量の減少や新型コロナの影響などによって3年連続で最終赤字に陥っており、2022年度も赤字が続く見込みだ。そのため競合飲料メーカーの社員らは「コカ・コーラBJHも苦しいことは間違いなく、値上げ幅を拡大できるならしたいはず」と見る。
コカ・コーラBJHの広報担当者は東洋経済の取材に対し、「さらなる大型ペットボトル製品の価格改定について、開示できることはございません」と回答した。
ある飲料メーカー社員は飲料業界について、「過去を振り返れば、いかに他社を出し抜くかという権謀術数の世界だ」と表現する。商品力よりも、安売りによって他社を出し抜くことが常態化してきたという。
価格だけで比較されない付加価値の高い商品を生み出し、安売りの消耗戦から抜け出すことができるのか。古くて新しい難題は依然残りそうだ。
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